
脳神経系の後遺症に悩んでいる方、治療を希望されている方に向けて、くも膜下出血の後遺症について解説いたします。
脳梗塞やくも膜下出血など、脳卒中が引き起こされた後には後遺症が残ることが少なくありません。
日常生活やコミュニケーション、動作で障害を感じてしまう方も多く、むしろ脳卒中の回復後にこそ、生活の支障が顕著になることもあります。
今回の記事ではくも膜下出血の後遺症や合併症について詳しく解説します。
参考にしていただければ引き起こされるリスクのある後遺症の特徴についてご理解いただけ、改善に向けた方法を見出せる可能性があります。
関連記事:脳卒中の後遺症で再生医療が適応される4つのケースとリスクについて
目次
くも膜下出血とは?

「くも膜下出血」とは、脳を包んでいる「軟膜」と「くも膜」の間で出血が生じることです。
脳は軟膜・くも膜・硬膜と3つの膜で包まれています。
脳血管の中にこぶができ、破れると軟膜とくも膜の間で出血が起こりくも膜下出血となります。
血管の中のこぶが破れると脳の圧力が高くなり、血流が阻害されてしまいます。
血流の停止により、脳に損傷が加わることもあり、くも膜下出血を起こすと後遺症が残ることも珍しくありません。
くも膜下出血の症状

くも膜下出血が生じると次のような症状が見られるでしょう。
【症状】
- 激しい頭痛
- 嘔吐
- 意識障害
予兆が見られることは少なく、突然激しい頭痛や嘔吐が起こり、意識障害を伴うこともあります。
意識が戻らず、そのまま命を失ってしまう可能性も低くありません。
くも膜下出血の予後

くも膜下出血となり回復後の経過は、患者様の症状の重症度によって異なります。
軽症の方であれば手足の動きが鈍くなったり、少し話しにくくなったりする程度の後遺症が残る程度でしょう。
しかし重症の方では意識が戻ることもなく、寝たきりになってしまうこともあります。
さらに最善の努力を尽くしたとしても、残念ながら死亡に至るケースも多く報告されています。
症状の重さにより変わりますが、予後は良くはなく、くも膜下出血になったら何かしらの後遺症が残ると考えてください。
ただし、早期の治療と適切なリハビリにより回復を目指せるケースもあります。
関連記事:くも膜下出血後の生活において気をつけたい9つのポイントについて
くも膜下出血の原因

それではくも膜下出血はなぜ引き起こされるのでしょうか?
原因について見ていきましょう。
原因1:脳動脈瘤の破裂
くも膜下出血はほとんどの場合、脳動脈瘤の破裂によって起こります。
最初に解説した「血管のこぶ」が脳動脈瘤です。
くも膜下出血は脳動脈瘤がある日突然破裂して出血することにより引き起こされることが多いとされています。
原因2:脳動静脈奇形の出血
脳動静脈奇形による出血でくも膜下出血が引き起こされることもあります。
脳動静脈奇形とは血管が異常に絡み合って塊となった状態で、脳の動脈と静脈がつながることによって起こります。
血管が塊になると血管壁が薄くなり、破れやすくなるためくも膜下出血を引き起こしやすくなります。
原因3:その他の原因
稀ではありますが、外傷、血管炎、腫瘍、抗凝固薬の影響などによってもくも膜下出血が起こることがあります。
くも膜下出血の前兆

くも膜下出血には前兆があり、次のような症状が見られた場合はできる限り早めに病院を受診してください。
【くも膜下出血の前兆】
- 急に頭痛が起きる
- 視力が低下したように感じる
- めまい・吐き気・嘔吐がある
- 意識が低下したり頭がぼんやりしたりする
「突然発症する」とされるくも膜下出血ですが、実は前兆が見られることも珍しくありません。
ご紹介したような違和感があったら、数日後にくも膜下出血になるリスクが高いとも考えられます。
たとえその場で症状が治まったとしても、念の為脳神経外科を受診するようにしましょう。
参照:循環器病研究振興団体:(PDF)知っておきたい循環器病あれこれ156脳卒中・心筋梗塞の前触れと早期対策
関連記事:くも膜下出血には前兆がある?早め処置が予後に大きく影響!原因や症状、治療法を解説
くも膜下出血の合併症

くも膜下出血では合併症が引き起こされることが少なくありません。
発症後しばらく経った後、次のような症状が引き起こされることがあります。
合併症1:水頭症
くも膜下出血後に見られる合併症として多いのが「水頭症」です。
脳の中の脳脊髄液の流れが悪くなることにより脳の圧力が高まり、水頭症が引き起こされるケースは少なくありません。
特に重症度の高いくも膜下出血で多いとされています。
水頭症により脳機能が圧迫されると、歩行障害、排尿障害、認知機能の低下といった症状が生じる可能性があります。
治療としては、脳室と腹腔をつなぐシャント手術が行われることが一般的ですが、術後も一定の後遺症が残ることがあります。
合併症2:脳血管攣縮
「脳血管攣縮」も合併症のひとつです。
水頭症よりも早く、くも膜下出血発症から4~14日目において多く見られます。
血管が縮んで血流が悪くなる現象であり、脳虚血につながるケースも少なくありません。
意識障害になったり会話が難しくなったり、手足の麻痺が起こったりする症状が代表的です。
合併症3:再出血
くも膜下出血を発症した後、最も注意が必要な合併症のひとつが「再出血」です。
初回出血後、治療が行われるまでの間や、動脈瘤が未処置のままの場合には、再度血管が破れて出血するリスクが非常に高くなります。
再出血は特に発症から24時間以内に多く、初回出血よりも重篤な症状や致命的な状態になることがあります。
症状としては、再び突然の頭痛や意識障害、けいれん発作などが現れることがあり、致死率は50%以上と報告される場合もある非常に危険な合併症です。
そのため、くも膜下出血の診断後はできるだけ早期に動脈瘤の閉塞(コイル塞栓術やクリッピング手術)を行い、再出血を防ぐ治療が重要となります。
くも膜下出血の後遺症

それではくも膜下出血でよく見られる後遺症について見ていきましょう。
後遺症1:嚥下障害
後遺症のひとつであるのが「嚥下障害」です。
食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなり、むせたり呼吸が困難になるなどの状態を指します。
くも膜下出血の後遺症の中でも、合併症としてご紹介した「誤嚥性肺炎」につながる可能性があるのが嚥下障害です。
気管支や肺の中に食べ物などが入ってしまうと、肺炎に進行して危険な状態になることもあるでしょう。
後遺症2:高次脳機能障害
言葉が話せない、会話が理解できないなどの症状が現れるのが「高次脳機能障害」です。
注意力や集中力、記憶力が失われることもあります。
脳疾患の後遺症として広く知られ、身体的には健康であるものの、日常生活に支障をきたす状態となることが多くなります。
怒りっぽくなるなどの精神的症状が見られるケースもあり、早期の支援が必要な症状です。
参照:ガイドブック・マニュアル | 国立障害者リハビリテーションセンター
後遺症3:手足のマヒ
くも膜下出血の後遺症のひとつであるのが「手足のマヒ」です。
脳梗塞の後遺症でも手足のマヒが見られますが、損傷を受けた脳の場所によっては、左右どちらかの手足にマヒが生じることがあります。
しかしくも膜下出血では四肢すべてにマヒがあったとの例も報告されました。
他の後遺症とともに、手足のマヒが起きることもあります。
参照:くも膜下出血により意識障害、四肢麻痺を呈した症例に対して、している ADL への反映を目指した一症例
後遺症4:排せつ障害
脳の損傷部分によっては、「排せつ障害」が起きるケースも見られます。
脳には排せつを調整しているところがあり、その部分が損傷を受けることで排せつがうまくできなくなるためです。
たとえば頻尿になったり、失禁をしてしまったりなどの症状が見られるでしょう。
くも膜下出血になりやすい人

それではくも膜下出血になりやすい人の特徴についてご紹介します。
【くも膜下出血になりやすい人の特徴】
- 高血圧である
- 喫煙者である
- 過度な飲酒を頻繁にする
- 食生活が乱れている
- 運動量が少ない
- ストレスを感じやすい
- 輸血歴がある
- 家族や親族に脳卒中の病歴がある
くも膜下出血のリスクは生活習慣にあります。
喫煙や飲酒、食生活の乱れによって高血圧になれば、リスクが高まると言えるでしょう。
また定期的な運動を行っていない方、ストレスを感じやすい方も要注意です。
そして意外と知られていないのが輸血歴のある方のリスクです。
輸血を受けた経験がある方では、くも膜下出血の発症リスクが高まるとの報告もあります。また遺伝性もあり、親族の中に脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の病歴がある方は発症しやすいかもしれません。
くも膜下出血の治療

それでは最後に、くも膜下出血が起きたときの治療法について解説します。
治療法1:開頭クリッピング術
開頭クリッピング術」は、頭の骨を切開して、直接動脈瘤への血液の流れをせき止める手術法です。
脳動脈瘤の根本の部分を、クリップで血管を閉じ、根元から血流を遮断します。
全身麻酔下で手術を行い、1週間~数週間ほどの入院が必要となるでしょう。
古くから用いられている術式であり、効果が高いとされていることが特徴です。
治療法2:血管内コイル塞栓術
「血管内コイル塞栓術」は金属製のコイルで動脈瘤を詰める手術です。
手術を行う際には、カテーテルを誘導してコイルをつめ、動脈瘤への血流を阻害します。
頭を切開する必要がないことがメリットと言えますが、最近ではこちらが主流にもなってきている手術でありますが、再発の可能性もあると報告されています。
参照:関東労災病院:未破裂脳動脈瘤 (クリッピング、コイリング)について
治療法3:再生医療
くも膜下出血後に残る手足の麻痺や高次脳機能障害に対しては、一般的にはリハビリテーションが中心となりますが、当院ではこのような後遺症に対して再生医療的アプローチも行っています。
ひとのわメディカルでは、幹細胞培養上清液(SHED-CM)などを用いた再生医療を提供しており、神経の修復や機能維持を目的とした治療を行っています。
これは、幹細胞が分泌するサイトカインや成長因子などの有効成分を用いることで、体への負担が少なく、非侵襲的に治療を行えるのが特徴です。
関連記事:再生医療にリスクはある?3つのリスクと事前に知っておきたい注意点
関連記事:再生医療の流れを知る:「上清液治療」を安心して受けるために
くも膜下出血の後遺症・合併症には適切な治療を

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、くも膜下出血の後遺症についてご理解いただけたと思います。
くも膜下出血では後遺症や合併症が起こるリスクが高く、改善を目指すには適切な医療を受けることが重要です。
ひとのわメディカルでは患者様の後遺症や身体の状況にあわせた、総合的な治療をご提供いたします。
再生医療とリハビリを組み合わせた治療で回復を目指しますので、お気軽にご相談ください。