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ALSの症状とは?検査方法や治療法を解説

ALSを発症すると、手足の動かしにくさや言葉の出にくさといった症状が現れ始め、次第に身体を動かすことが難しくなり、やがて呼吸も十分にできなくなります。
早期に適切な治療を受けることで進行を遅らせられるため、まずは自分の身体に起きている違和感を見逃さないことが大切です。

本記事では、ALSについて、初期症状から治療法まで解説しています。
日常の不安を和らげ、前向きに生活していくために、ぜひ最後までご覧ください。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、脳や脊髄にある運動神経に異常が起こることで、脳からの命令が筋肉に伝わらなくなり、筋力が低下していく病気です。

ALSを発症すると、手足や喉、舌、さらには呼吸に関わる筋肉が動かなくなります。
その一方で、感覚や視力、聴力、内臓などの機能は通常に保たれるのが特徴です。

日本では厚生労働省によって指定難病に認定されているほか、進行が早く、生命維持のための治療を受けない場合は発症から2〜5年で亡くなるケースが多いといわれています。

参照:厚生労働省「指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票(告示番号1~348)」

ALSの初期症状

ここからは、ALSにみられる代表的な初期症状を解説します。
身体の小さな変化も見逃さないことが、症状の進行を遅らせる手がかりになります。

【ALSの初期症状】

  • 筋力低下や筋萎縮
  • 筋肉の微細な動き
  • 筋肉の硬直やけいれん
  • 筋肉の疲労感・脱力感
  • 肩こり・関節の痛み

筋力低下や筋萎縮

ALSを発症すると、筋肉を十分に動かせないことで力が入りにくくなる“筋力低下”や、筋肉が痩せていく“筋萎縮”が起こります。

初期には手や足の一部位から症状が現れることが多く、その部位の動かしにくさをきっかけに医療機関を受診する方も少なくありません。
具体的には、「重いものを持てない」「洋服のボタンがかけにくい」「走りにくい」「階段の上り下りがつらい」といった症状がみられます。

筋肉の微細な動き

ALSの初期には、“線維束性収縮”とよばれる筋肉の小さな動きがみられることもあります。
筋肉がぴくぴくと動いている様子が皮膚の上からでもわかり、自分の意思とは関係なく勝手に反応してしまうのが特徴です。

ただし線維束性収縮は、ストレスや睡眠不足、過労などが原因で一時的に起こることもあるため、この症状だけではALSであると断定できません。

筋肉の硬直やけいれん

筋肉の硬直やけいれんも、ALSの初期症状の一つに挙げられます。
こうした症状は四肢や体幹に現れやすく、歩行や日常動作に支障をきたすほか、夜間にけいれんが起きて睡眠を妨げられることもあります。

筋肉の疲労感・脱力感

ALSの初期には、筋肉の疲労感や脱力感を覚えることもあります。
「すぐに疲れてしまい、長時間歩けない」「ペットボトルのふたが開けられない」といった症状を感じるようであれば、ALSを発症しているかもしれません。
こうした筋肉の疲労感や脱力感にくわえ、ほかの初期症状もみられる場合にはALSの疑いが高まります。

肩こり・関節の痛み

肩こりや関節の痛みも、ALSの初期に起こりえる症状です。

運動神経のはたらきが部分的に低下し、筋肉の使い方に偏りが生じると、動きを補おうとしてほかの筋肉や関節に過剰に負荷がかかります。
こうして身体の一部に無理が生じてしまうことで、肩こりや関節の痛みを引き起こすというわけです。

ALSを発症する原因

ALSを発症する原因は、2025年11月時点では解明されていません。
しかし、以下の複数の要素が関係していると考えられています。

【ALSを発症する原因】

  • 遺伝子異常
  • 異常なタンパク質の蓄積
  • 酸化ストレス
  • グルタミン酸毒性
  • ミトコンドリア機能不全

遺伝子異常

ALSを発症する原因としてまず考えられるのは、“遺伝子異常”です。

ALSを発症した方の約10%は、両親や祖父母、叔父叔母などの血縁者にALSにかかった方がいるケースが多いといわれます。
このように、血縁者に発症例がみられるものを“家族性ALS”とよびます。

とはいえ、ALS患者のうち約90%の方は、遺伝以外の原因でALSを発症しているのが実情です。
つまり、血縁者にALSを発症した方がいるからといって、そのすべてのケースでほかの血縁者の発症率が高いというわけではありません。

参照:難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)」

異常なタンパク質の蓄積

一説では、異常なタンパク質が神経内に蓄積されることも、ALS発症の原因であることが有力です。

通常、細胞内のタンパク質には一定の構造と役割があります。
しかしALSでは、“TDP-43”というタンパク質が本来存在すべき“細胞核”から“細胞質”へと移動し、異常な凝集体が形成されていることが多くの患者から確認できているようです。

細胞内の異常なタンパク質が細胞の機能を悪くし、神経系全体のはたらきが正常に保てなくなることで、ALSの症状が現れると考えられています。

参照:北海道大学「ALS/FTDの原因となる凝集体形成機構を解明p2」

酸化ストレス

その異常なタンパク質ができる原因の一つに、“酸化ストレス”が挙げられます。

酸化ストレスとは、活性酸素が体内に増え過ぎた結果、身体の細胞や組織がダメージを受けている状態のことです。
この酸化ストレスの蓄積により、運動神経が傷つけられ、ALSの初期症状である筋力低下や筋萎縮が起こってしまうのではないかと考えられています。

酸化ストレスが生じる主な原因は、遺伝子要因と環境要因の2つです。
家族性ALSで確認されている遺伝子の変異がある場合、活性酸素を分解する酵素のはたらきが弱まり、細胞内で酸化ストレスが蓄積しやすくなります。
また化学物質やたばこの煙など環境から受ける影響も、酸化ストレスを増幅させ、ALSの発症や進行に関わるといわれています。

グルタミン酸毒性

ALSを発症する原因には、“グルタミン酸毒性”が関係しているという説もあります。

グルタミン酸とは、記憶や学習などの脳のはたらきに欠かせない神経伝達物質です。
情報伝達のはたらきを終えたグルタミン酸は、本来であれば再び神経や周囲のサポート細胞に取り込まれます。
しかしALSでは、なんらかの異常によってこの取り込まれるはたらきが弱まり、神経の途中にグルタミン酸が溜まりつづけてしまうのです。

そうして、溜まったグルタミン酸が運動神経を傷つけることで、筋力低下や筋萎縮などの初期症状が現れると考えられています。

関連記事:ALSを発症する原因とは?食べ物との関係性を解説

ミトコンドリア機能不全

“ミトコンドリア機能不全”も、ALS発症の原因の一つと考えられています。
ミトコンドリアとは、細胞の中に存在する小さな器官のことです。

この器官の機能が損なわれると、神経が必要とするエネルギーの産生効率が落ち、細胞のはたらきそのものが衰えていきます。
さらには活性酸素も増え、タンパク質やDNAが損傷しやすくなります。

ALSでは、損傷したタンパク質がミトコンドリア内に蓄積しやすくなり、傷んだミトコンドリアも適切に除去できません。
これにより細胞のはたらきが不安定になり、結果として、ALSの初期症状へとつながります。

関連記事:ALSを発症する原因とは?初期症状や治療法も解説

ALSの検査方法

ALSを発症しているか否かを正確に診断するためには、いくつかの専門的な検査を行う必要があります。
以下に挙げた検査方法の概要を、順に見ていきましょう。

【ALSの検査方法】

  • 針筋電図
  • 血液検査
  • 髄液検査
  • 頭部MRI・脊髄MRI
  • 末梢神経伝導速度検査
  • 遺伝子診断

針筋電図

針筋電図は、細い針を筋肉に直接刺して、筋肉が動くときに発生する小さな電気信号を調べる検査です。
神経からの命令が適切に筋肉に伝わっているのか、また、神経や筋肉に異常はないかという点を確認できます。

ALSを発症している場合、筋線維が過剰に反応する“神経原性変化”や、筋線維のけいれんを指す“脱神経所見”などがみられることがあります。

血液検査

ALSが疑われる場合の検査では、筋力低下の原因がほかの疾患によるものかどうかを確認するために、血液検査も行います。
ただし、通常はALSそのものによって血液に異常が現れることはありません。

髄液検査

髄液検査では、腰から針を刺して、脳や脊髄の周りに流れる髄液を採取します。
ALSを発症していても、髄液の成分は正常の範囲内であることが一般的ですが、タンパク質の値がやや高くなる方も一定数いらっしゃいます。

頭部MRI・脊髄MRI

頭部と脊髄のMRI検査では、筋力低下の原因となりえる脳梗塞や脳出血、腫瘍、頸椎疾患などを発症していないかどうかを確認します。
血液検査や髄液検査と同様に、ALS発症の有無を直接判別するための検査ではありませんが、これらの病気を除外することで診断をサポートします。

末梢神経伝導速度検査

末梢神経伝導速度検査は、手足を通る末梢神経に電気刺激を与えたときの反応を確認し、神経に異常がみられないかを調べる検査です。
末梢神経に異常がある場合は、電気信号の伝わる速度が遅くなる“伝導速度低下”や、活動電位が弱くなる“振幅低下”がみられます。

ALSの場合、この検査で異常が見つかるのはまれですが、一部の方では、筋萎縮の程度によって複合運動活動電位の振幅が小さくなることがあります。

遺伝子診断

ALSが遺伝性のものかどうかを確認するために行うのが、遺伝子診断です。
この診断は、ALSと似た症状を示す、ほかの遺伝性疾患との区別にも役立ちます。

診断の結果、ALSを発症しており、かつそれが遺伝によるものだとわかった場合、血縁者にも発症の可能性があります。
治療方針や今後の生活に関わる重要な情報のため、検査を受けるかどうか、結果をどのように知らされたいかなどについては、医師と十分に相談したうえで決定するのが一般的です。

ALSの治療法

ここでは、ALSの治療法を解説します。
ただし以下の治療法は、ALSの完治を目指すものではなく、症状の進行を遅らせたり、生活の負担を和らげたりすることが目的です。

【ALSの治療法】

  • 再生医療
  • 薬物療法
  • 手術療法
  • 対症療法

再生医療

ALSの新しい治療法として、神経機能の回復を目指す再生医療が近年注目を集めています。
再生医療とは、人の細胞が持っている“再生する力”を利用し、損傷した神経の修復や病気の進行抑制を図る医療技術です。

特に乳歯由来の幹細胞培養上清液を用いた治療は、ALSの進行を食い止める有望な選択肢であり、当院では臨床研究を重ね、ALSの治療に貢献しています。

関連記事:再生医療にリスクはある?3つのリスクと事前に知っておきたい注意点

薬物療法

ALSは進行性の神経疾患ですが、薬物療法によってその進行を抑えられるといわれています。

薬物療法で使用されるのは、主に酸化ストレスやグルタミン酸毒性といった神経を傷つける要因に作用する薬剤です。
具体的には、ALSの進行抑制に寄与する“リルゾール”や“エダラボン”、また発症初期や軽症の患者に対して有効性が期待できる“高用量メコバラミン(ロゼバラミン®)”が用いられます。

薬物療法の効果を最大限に引き出すためには、後述する対症療法と併用することにくわえて、診断後できる限り早期に治療を始めることが大切です。

関連記事:ALS治る時代がやってくる?最新の治療法と期待される効果を紹介

手術療法

ALSを根本的に治す手術療法は存在しませんが、症状の進行や状態に応じた外科的処置は、生活の質を維持するうえで非常に重要です。

呼吸機能が低下した場合には、気管切開や人工呼吸器の装着によって呼吸をサポートし、嚥下(えんげ)が困難になった際には胃ろうを造設して栄養摂取を補助します。

さらに、ほかの疾患を併発した場合にも、患者本人の意向や体の状態を踏まえて外科的処置を検討し、適切な時期に実施します。

対症療法

対症療法は、患者の日常生活の苦痛を和らげ、生活の質を維持するための治療です。

ALSの症状には、筋肉の硬直や呼吸障害、嚥下障害、さらに診断による気分の落ち込みなど、さまざまなものが挙げられます。
そのため患者一人ひとりの症状に寄り添える、対症療法に基づいたサポートが重要なのです。

たとえば、筋肉の硬直には薬物療法の実施、呼吸障害には人工呼吸器の使用、嚥下障害には胃ろうを通じた栄養管理が取り入れられます。
また、精神的な不調にはカウンセリングが行われるといった具合です。

こうした多職種による包括的なサポートを組み合わせることで、患者ができる限り自立した生活を続けられるよう支援していきます。

ALSには筋力の低下や筋萎縮、筋肉のけいれんなどの症状がある

ALSを発症すると、筋力の低下や筋萎縮、疲労感といった初期症状が現れます。
こうした初期症状を知り、身体の変化を察知することができれば、ALSの早期発見につなげられます。
早期の対応や適切な治療を受けながら、少しでも快適に過ごせる工夫を重ねていきましょう。

「ALSの症状に当てはまっている気がする……」という方は、一人で悩まず、ひとのわメディカルにご相談ください。
幹細胞培養上清液を用いた再生医療を中心に、患者様の状態に応じた治療法を提案し、ケアを含めた“総合的なサポート”を提供しています。

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瀨田 康弘

ひとのわメディカル 院長|再生医療認定医

神経疾患・難病への再生医療アプローチを専門とする。ALS特定臨床研究(jRCT031230731)の主研究者。