
スマホの普及率が急激に伸びた昨今、若年層のデジタル認知症※が問題視されています。
デジタル認知症は、認知症と類似した症状を伴い、いずれは若年性認知症につながるとも言われています。
スマホの使い過ぎで物忘れが激しくなったり、集中力が続かなくなったりした場合は、デジタル認知症の可能性があるため注意が必要です。
本記事では、スマホ認知症(デジタル認知症)※の症状や対策について解説します。65歳未満の若年時における物忘れなどの症状でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
※スマホ認知症(デジタル認知症)は医学的に正式な診断名ではありません。
目次
スマホ認知症は改善が期待できる
「最近、物忘れが増えた」「人の名前や言葉がすぐに出てこない」「集中力が続かない」と感じ、「スマホ認知症かもしれない」と不安になっている方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、スマホ認知症と呼ばれる状態は、生活習慣を見直すことで改善が期待できる場合があります。
ただし、「スマホ認知症」は医学的な正式診断名ではありません。また、症状が続く場合には、認知症や軽度認知障害(MCI)など他の病気が隠れている可能性もあるため、自己判断は避けることが大切です。
まずはスマホ認知症とはどのような状態なのかを理解し、改善のための第一歩を踏み出しましょう。
スマホ認知症(デジタル認知症)とは
「スマホ認知症」や「デジタル認知症」は、スマートフォンやデジタル機器の長時間使用によって、記憶力や集中力の低下、物忘れなど認知症に似た症状がみられる状態を指す俗称です。
医学的には正式な病名ではなく、診断基準も定められていません。
一方で、近年の研究では、スマートフォンの過度な使用は、注意力やワーキングメモリ(情報を一時的に保持して処理する能力)、睡眠の質などと関連する可能性が報告されています。2017年のレビューでは、スマートフォンの使用は注意機能や記憶、学習などにさまざまな影響を与える可能性がある一方で、その影響は使用方法や使用時間によって異なることが示されています(Wilmerら, 2017)。
また、「スマホ認知症」は「スマートフォンが認知症を引き起こす」という意味ではありません。情報過多や睡眠不足、注意力の分散などが重なり、一時的に認知機能が低下している状態を指す言葉として理解するとよいでしょう。
あなたは大丈夫?スマホ認知症セルフチェック
次のような症状に心当たりはありませんか。
- 人や物の名前がすぐに出てこない
- スマートフォンが手元にないと落ち着かない
- 調べた内容をすぐ忘れてしまう
- 集中力が続かず、仕事や勉強がはかどらない
- 夜遅くまでスマートフォンを見てしまう
- 家族や友人から「スマホを見すぎ」と言われる
これらに当てはまるからといって、すぐに認知症というわけではありません。しかし、生活習慣を見直すきっかけになるサインかもしれません。
詳しいセルフチェック項目やチェック結果の見方については、こちらの記事をご覧ください。
生活習慣の見直しで改善する可能性がある
スマホ認知症は、認知症とは異なり、生活習慣を改善することで症状が軽くなる可能性があります。
例えば、スマートフォンを使用する時間を見直す、寝る前の使用を控える、十分な睡眠をとる、適度な運動を取り入れることは、脳の疲労回復や集中力の改善につながる可能性があります。
実際に、スマートフォンの過度な使用は睡眠の質の低下や睡眠不足と関連することが報告されており(Chuら, 2023)、睡眠不足そのものが記憶力や注意力の低下につながることも広く知られています。
一方で、現時点ではスマートフォンの使用が認知症を直接引き起こすという十分な医学的根拠はありません。2025年に発表された50歳以上を対象としたメタ解析では、デジタル機器の利用は認知機能低下リスクの上昇とは関連せず、むしろ認知機能の維持と関連する可能性も示されました(Benge & Scullin, 2025)。
つまり、問題となるのはスマートフォンそのものではなく、「長時間使用」「睡眠不足」「情報過多」「運動不足」などの生活習慣であると考えられています。
スマホ認知症はどれくらいで改善する?

スマホ認知症が「どれくらいで治るのか」は、多くの方が気になる点です。
ただし、スマホ認知症は正式な診断名ではないため、「何日で治る」「何週間で改善する」といった明確な基準はありません。症状の強さ、スマートフォンの使用時間、睡眠の状態、ストレス、年齢、もともとの病気の有無などによって、改善までの期間は変わります。
大切なのは、「すぐに治らないから認知症だ」と考えすぎないことです。一方で、症状が長く続く場合や、生活・仕事に支障が出ている場合は、スマホの影響だけでは説明できないこともあります。
改善までの期間には個人差がある
スマートフォンの使いすぎによる不調は、主に情報過多、注意力の分散、睡眠不足、運動不足などが重なって起こると考えられます。
特に睡眠は、記憶や集中力と深く関係しています。スマートフォンの過度な使用は、睡眠の質の低下や睡眠時間の短縮と関連することが報告されています(Chuら, 2023)。そのため、寝る前のスマホ使用を控えるだけでも、頭のすっきり感や集中力が改善する可能性があります。
ただし、改善のスピードには個人差があります。1週間ほどで「頭が軽くなった」と感じる方もいれば、生活リズムを整えてもすぐには変化を感じにくい方もいます。焦らず、まずは2〜4週間ほど生活習慣を見直してみることが現実的です。
改善しやすい人・改善しにくい人の特徴
改善しやすいのは、スマートフォンの使用時間が長く、睡眠不足や情報の見すぎが主な原因と考えられる方です。たとえば、寝る前に長時間SNSや動画を見ている、通知が気になって集中が続かない、調べものをしすぎて頭が疲れる、といった場合は、スマホの使い方を変えることで改善が期待できます。
一方で、改善しにくい場合もあります。たとえば、物忘れが徐々に悪化している、同じことを何度も聞く、約束を忘れる、仕事で明らかなミスが増えた、家族から認知機能の低下を指摘される、といった場合です。
このような場合は、スマホ認知症と思い込まず、軽度認知障害(MCI)や認知症、うつ病、睡眠障害、甲状腺疾患、薬の影響など、他の原因がないか確認することが大切です。
スマホ認知症の治し方|今日からできる改善方法

スマホ認知症は、認知症というよりも、「長時間の使用」「情報過多」「睡眠不足」「運動不足」「注意力の分散」など、複数の生活習慣が重なって起こると考えられています。
そのため、改善のためには「スマホを完全にやめる」必要はありません。無理なく続けられる範囲で生活習慣を見直すことが大切です。
スマホの使用時間を見直す
スマホ認知症の改善には、まずスマートフォンとの付き合い方を見直すことが重要です。
例えば、SNSや動画を何となく見続けてしまう時間を減らしたり、通知を必要最低限に設定したりするだけでも、集中力の低下を防ぎやすくなります。
また、「調べればすぐ分かる」と検索に頼りすぎるのではなく、一度自分で思い出してから検索する習慣をつけることも、記憶を使う機会を増やすことにつながります。
近年のレビューでは、スマートフォンの過度な使用は注意力やワーキングメモリと関連する可能性が報告されており(Wilmerら, 2017、Liebherrら, 2020)、使用時間だけでなく、「どのように使うか」も大切であると考えられています。
スマホの使用状況が気になる方は、まずセルフチェックで現在の状態を確認してみましょう。
睡眠・運動・生活習慣を整える
記憶を整理・定着させるためには、十分な睡眠が欠かせません。
スマートフォンを寝る直前まで使用すると、画面から発せられる光や、SNS・動画などによる脳への刺激によって寝付きが悪くなったり、睡眠の質が低下したりすることがあります。
システマティックレビューでは、スマートフォンの過度な使用は睡眠時間の短縮や睡眠の質の低下と関連することが報告されています(Chuら, 2023)。
また、適度な運動も認知機能の維持に役立つことが知られています。毎日20〜30分程度の散歩や軽い運動を取り入れるだけでも、脳への血流改善や気分転換につながります。
まずは、「寝る1時間前はスマホを見ない」「毎日少しでも歩く」など、続けやすい習慣から始めることをおすすめします。
デジタルデトックスを取り入れる
デジタルデトックスとは、一定時間スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から離れて過ごすことです。
例えば、食事中や就寝前、休日の数時間だけでもスマホを手放す時間を作ることで、脳を休ませる時間を確保できます。
その時間に読書や散歩、人との会話、趣味などを取り入れると、スマートフォンでは得られない刺激を受けることができ、気分転換にもつながります。
ただし、「スマホを全く使わない生活」を目指す必要はありません。
2025年に発表されたメタ解析では、デジタル機器の利用自体が認知機能低下のリスクを高めるという結果は示されておらず、適切に活用することは社会参加や認知機能の維持に役立つ可能性も報告されています(Benge & Scullin, 2025)。
大切なのは、スマートフォンを生活に役立つ道具として使いながら、「使われる」のではなく「使いこなす」ことです。
スマホ認知症だと思っても医療機関を受診した方がよい場合
スマホ認知症は、生活習慣の見直しによって改善が期待できることがあります。しかし、「スマホの使いすぎだろう」と自己判断してしまうと、本来治療が必要な病気を見逃してしまう可能性があります。
特に、物忘れや集中力の低下が長く続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
スマホ認知症と認知症・MCI・若年性認知症との違い
スマホ認知症は、医学的な正式診断名ではなく、スマートフォンの長時間使用などによって一時的に認知機能が低下した状態を指す俗称です。
一方、軽度認知障害(MCI)は、年齢相応以上の物忘れなど認知機能の低下がみられるものの、日常生活はほぼ自立して送れる状態をいいます。MCIのすべてが認知症へ進行するわけではありませんが、一部は認知症へ移行する可能性があることが知られています。
また、若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症の総称です。仕事や家事への影響が現れやすく、「疲れているだけ」「ストレスのせい」と見過ごされることも少なくありません。
スマホ認知症では、スマートフォンの使用時間を減らしたり生活習慣を整えたりすることで改善が期待できることがあります。一方、認知症やMCIでは症状が徐々に進行することが多く、原因や治療方針も異なります。
物忘れが続く場合には、「スマホのせい」と決めつけず、必要に応じて医療機関で相談することが大切です。
自己判断せず医療機関へ相談した方がよい症状
次のような症状がある場合は、スマホ認知症だけではなく、認知症や他の病気が関係している可能性があります。
- スマホの使用時間を減らしても1か月以上改善しない
- 同じことを何度も聞いたり話したりする
- 約束や予定を頻繁に忘れる
- 仕事や家事で以前にはなかったミスが増えた
- 道に迷うことがある
- 家族から物忘れや性格の変化を指摘された
- 言葉が出にくい、手足の動かしにくさ、強い頭痛など他の症状もある
このような場合は、脳神経内科やもの忘れ外来などで相談することをおすすめします。
認知機能の低下は、認知症だけでなく、うつ病、睡眠障害、甲状腺疾患、ビタミン不足、薬の影響などさまざまな原因で起こることがあります。原因を正しく調べることで、適切な治療や生活指導につながる場合もあります。
認知機能低下が気になる方はご相談ください

認知症・神経疾患に対する再生医療という選択肢
ひとのわメディカルでは、認知症や神経疾患に対する再生医療についてご相談を受け付けています。
現在、歯髄幹細胞培養上清液を用いた治療は、認知症に対する標準治療ではなく、研究が進められている分野です。基礎研究や動物実験では、神経保護作用や抗炎症作用などが報告されていますが、すべての方に同じ効果が期待できるわけではありませんが、一定の改善効果がある方がいます。
どうしても良くならない。生活に支障が出る。どこにいっても、様子見にされる。当院では、患者さん一人ひとりの症状やお困りごとを丁寧にお伺いし、必要に応じて検査や他の医療機関への受診も含めてご提案しています。
「最近物忘れが増えた」「スマホ認知症かもしれない」「認知症との違いが気になる」といった不安がある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
スマホ認知症は医学的な正式診断名ではありませんが、スマートフォンの長時間使用や睡眠不足、情報過多などによって、物忘れや集中力の低下といった認知症に似た症状が現れることがあります。
多くの場合は、スマホの使い方や生活習慣を見直すことで改善が期待できます。一方で、症状が続く場合や日常生活に支障が出ている場合には、認知症や軽度認知障害(MCI)、その他の病気が隠れている可能性もあります。
不安な症状を自己判断だけで済ませず、必要に応じて医療機関へ相談することが大切です。早めに原因を確認することで、適切な対応につながる可能性があります。
デジタル認知症の症状は、若年層を中心に広がりを見せています。
通常の認知症のような脳の萎縮などは見られませんが、記憶力や集中力、注意力の低下と言った認知症と類似した症状が現れる点が特徴です。
1日の中にスマホを使わない時間を設けることで、デジタル認知症の予防が可能です。
また、デジタル認知症はアルツハイマー型認知症につながると言われます。最近では、若年性認知症も問題になっていることから早めの対策が重要です。
ひとのわメディカルでは、アルツハイマー型認知症発症後や予備軍の方々への治療を行っています。
記憶力や集中力、注意力の低下といった認知症に見られるような症状でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
<参考文献>
Wilmer HH, Sherman LE, Chein JM. Smartphones and Cognition: A Review of Research Exploring the Links between Mobile Technology Habits and Cognitive Functioning. Frontiers in Psychology. 2017;8:605. doi:10.3389/fpsyg.2017.00605
スマホ使用と注意・記憶・認知機能の総説です。
Liebherr M, Schubert P, Antons S, Montag C, Brand M. Smartphones and attention, curse or blessing? A review on the effects of smartphone usage on attention, inhibition, and working memory. Computers in Human Behavior Reports. 2020;1:100005. doi:10.1016/j.chbr.2020.100005
注意・抑制・ワーキングメモリへの影響を整理したレビューです。
Chu Y, et al. Dose-response analysis of smartphone usage and self-reported sleep quality: a systematic review and meta-analysis of observational studies. 2023.
スマホ過使用と睡眠の質低下、睡眠不足、入眠遅延との関連を示したシステマティックレビュー/メタ解析です。
Benge JF, Scullin MK. A meta-analysis of technology use and cognitive aging. Nature Human Behaviour. 2025;9:1405–1419.
50歳以上を対象に、デジタル機器使用と認知機能低下リスクの関連を検討したメタ解析です。「スマホ=認知症の原因」と断定しないために重要です。