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ALSの進行速度は?初期・末期の症状を紹介

ALSを発症すると、筋力が徐々に低下し、末期には身体を動かすことができなくなってしまいます。
診断を受けたご本人や周囲の方としては、どのくらいの期間をかけてこれらの症状が進行していくのか把握しておきたいのではないでしょうか。

そこで今回は、ALSの一般的な進行速度を紹介します。
くわえて、初期・末期にみられる症状の特徴も解説しているので、本記事でALSの基本情報を押さえていきましょう。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

ALSとは、“運動ニューロン”とよばれる、身体を動かすための命令を脳から筋肉に伝達する神経細胞のはたらきが弱まる疾患です。
脳からの「身体を動かせ」という命令が筋肉まで伝わりづらくなり、次第に手足や舌、喉、また呼吸に必要な筋肉が痩せていきます。
そして末期には全身の筋肉が思うように動かせず、呼吸も自立して行えなくなり、人工呼吸器が必要な状態になるのです。

残念ながら、ALSの進行を完全に止める治療方法は確立されていません。
ただし、薬物療法や手術、またリハビリテーションなど、進行を遅らせるための治療は存在します。
症状によって適切な治療は異なるので、患者様自身の症状をきちんと把握して治療方法を選ぶことが大切です。

ALSの一般的な進行速度

発症してから人工呼吸器が必要となる、もしくは亡くなってしまうまでの一般的な期間は、2~5年といわれています。

ただし、ALSの症状の進行速度は患者様ごとに大きく異なります。
数か月で末期症状がみられるようになる場合もあれば、人工呼吸器を使わずに十数年にわたってゆっくりと進行する場合もあるといった具合です。
大きく4種類にわかれるといわれ、急激に進行するタイプ、通常通り進行するタイプ、ゆっくりと進行するタイプ、一度急激に進むが、その後長い期間進行が進まないタイプ。
こうした違いは、発症した年齢や合併症の有無などさまざまな要素によって生じるので、上記はあくまで目安として参考にしてください。

ALSの初期症状のタイプ

ALSの初期症状は、発症する部位の違いで主に4タイプに分けられます。
以下でタイプ別の特徴を確認しましょう。

【ALSの初期症状の主なタイプとその特徴】

ALSの初期症状のタイプ

症状の特徴

上肢型

・上肢(肩から手まで)の筋力低下が主症状
・「手や指が動かしづらくなる」「肘から先に力が入らない」といった症状がみられる

下肢型

・下肢(股関節から足まで)の筋力低下が主症状
・最初は左右いずれかの足に違和感が出る傾向にある

球麻痺型

・ 舌・喉の筋力低下による言語障害や嚥下障害が主症状
・ろれつが回らなくなったり、食べ物をうまく飲み込めなくなったりする

呼吸筋麻痺型

・呼吸困難が主症状
・息切れや息苦しさを感じる
・初期症状として現れる可能性は低い

最初にいずれかのタイプの症状がみられたのち、進行していくにつれてほかのタイプの症状も現れ始めます。

ALSの末期症状

ALSが進行して各症状が悪化すると、末期には以下のような状態となります。

【ALSの末期症状】

  • 身体を動かすことが困難になる
  • コミュニケーションが取りづらくなる
  • 食べ物や飲み物を飲み込みづらくなる
  • 呼吸がうまくできなくなる

身体を動かすことが困難になる

上肢・下肢の筋力低下の症状が進むと、身体を自由に動かすことが難しくなります。
最初は「ペットボトルのふたが開けられない」程度だったものが、「肘から先に力が入りづらくなった」というように症状が悪化し、日常生活の動作がままならなくなるのです。

最終的には寝たきりとなり、周囲の方や介護スタッフからのケアが不可欠な状態に至ります。

コミュニケーションが取りづらくなる

ALSの球麻痺型の症状が進行することで、末期には意思疎通の方法も限られてきます。
舌や喉の筋肉に力が入らなくなると、最終的には声を発せなくなります。
さらには、手の筋力低下で書字が難しいことも相まって、コミュニケーションが取りづらくなるわけです。

ただし、この場合にも筋力低下の影響を受けにくい、眼球の動きを活用したコミュニケーションの方法が確立されています。

食べ物や飲み物を飲み込みづらくなる

ALSの末期には、食べ物や飲み物を飲み込みづらくなる嚥下障害の症状も強く現れます。
舌や喉の筋力が徐々に弱くなり、うまく飲み込めずにむせてしまうわけです。

嚥下障害では、このようにむせやすくなってしまうので、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高くなります。
また、食が細くなり栄養障害を引き起こすこともあります。
この場合には、栄養障害が筋肉量の減少を招き、それがまた嚥下障害を深刻にするという悪循環にもつながりかねません。

ですから嚥下障害が進んだ際には、とろみをつけて飲み込みやすくするなど、食事を継続的に摂れるようなサポートが必要です。

呼吸がうまくできなくなる

ALSの末期症状のなかでも最後に現れることが多いのが、呼吸困難の症状です。

息切れや睡眠中の息苦しさといった症状がみられたのち、最終的に自立して呼吸できなくなり、生命に関わる状況に陥ります。
この場合には、生命維持のために呼吸を補助する人工呼吸器の装着が必須となります。

関連記事:ALS患者様の寿命はどのくらい?治療法やリハビリ方法を解説

ALSの四大陰性症状

ALSではさまざまな症状がみられますが、末期に至っても出現しにくい“四大陰性症状”とよばれるものがあります。
以下の4つは、ALSを発症しても初期症状として現れる可能性が低いものです。

【ALSの四大陰性症状】

症状

備考

膀胱直腸障害

・膀胱や直腸を動かす筋肉への命令は影響を受けないことが多い
・尿意や便意を感じられるため、介助があれば自分で排泄できる

眼球運動障害

・眼球を動かす神経は罹患の影響を受けないことが多い
・ALSの症状が進行したときに、まばたきや眼球の動きで意思の疎通が図れる

感覚障害

・ 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の知覚神経は罹患の影響を受けないことが多い

褥瘡(床ずれ)

・適切な体位変換やケアを行えば、床ずれは比較的起きにくい

ALSは神経細胞の不調による疾患ではあるものの、膀胱・直腸の筋肉や眼球を動かす神経への影響は少ないと考えられています。
さらに知覚神経に関する障害においては、初期では起きないといわれています。

このように、ALSを発症しても身体のすべての機能が低下するわけではありません。
ALSの症状の出にくい部分を活かし、仕事や趣味に打ち込む方も多くいらっしゃいます。

関連記事:【ALS確率】ALSの生涯リスクを徹底検証!知られざる発症率

ALSの検査方法

本記事をご覧になった経緯として、ご自身・周囲の方にALSの疑いがあって情報を集めている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。あその場合には、ALSの検査方法も確認しておきましょう。

【ALSの検査方法】

検査方法

概要・詳細

針筋電図

・細い針を筋肉に刺し、筋肉の電気活動を調べる筋力の問題が
・筋肉・末梢神経・脊髄のうちいずれにあるのか推定できる
・ALSの可能性がある場合、手足などの筋肉に命令を送る“下位運動ニューロン”に障害がみられる

末梢神経伝導速度検査

・手足に信号を送る末梢神経に電気刺激を与えて、障害が起こっているかどうかを判別する
・障害がある場合は、伝導速度の低下(電気の伝わる速度が遅い)や、振幅低下(活動電位が弱い)がみられる

血液検査

・ALS以外の疾患の可能性がないかを確認するために行われる
・ALSが原因の場合、血液に異常が認められることはない

髄液検査

・ALS以外の疾患の可能性がないかを確認するために行われる
・腰から針を刺し、脳や脊髄の周りを流れる髄液を採取して成分を分析する
・ALSを発症していても、一般的には髄液の成分に異常がみられることはないが、まれにタンパク質の値がやや高くなる場合がある

頭部MRI・脊髄MRI

・ALS以外の疾患の可能性がないかを確認するために行われる
・筋力低下の原因となる腫瘍や神経疾患などの病気の有無を判別できる

ALSの発見に特化した検査方法はないため、これらの検査と医師の診察を受けることで総合的に判断されます。
ALSと診断されるまでに1年程度かかる場合もあるので、発症が疑われるのであれば迅速に脳神経内科に受診することが大切です。

関連記事:ALS検査の流れと診断方法を詳しく解説!

ALSと診断された場合にすべきこと

検査や診察を受けてALSであることが判明した場合には、療養に向けて準備を進めていくことになります。
本項では、ALSと診断された場合にすべきことを3つ紹介します。

【ALSと診断された場合にすべきこと】

  • 療養環境を整える
  • 医療費助成制度を利用するための手続きを行う
  • 介護サービスを受けるための手続きを行う

療養環境を整える

ALSと診断された際にまず取り組むべきは、療養環境の整備です。

ALSの患者様の多くは、ご自宅での療養を選択する傾向にあります。
在宅療養を希望する場合は、身体を動かすのが難しくなっても快適に過ごしやすいように、屋内外の段差をなくしたり、手すりをつけたりと環境を整えておきましょう。

なお、在宅療養では、訪問での看護やリハビリテーションを利用するのが一般的なため、スタッフがいない時間帯には周囲の方のサポートが欠かせません。
飲み込みやすい食事の作り方や栄養の管理方法など、ALSの患者様をサポートするための正しい知識を早い段階で身につけておくことが重要です。

医療費助成制度を利用するための手続きを行う

厚生労働省が定める“指定難病”に該当するALSの医療費は、その重症度や毎月の医療費の総額で一定の条件を満たした場合に“特定医療費”の助成を受けられます。
申請が通れば、毎月の医療費の自己負担上限額が0~3万円となるため、必ず手続きを行いましょう。

受給要件や申請方法などの制度の詳細は、難病情報センターのサイトを見るか、もしくはかかりつけの医療機関の相談員にご確認ください。

参照:公益財団法人 難病医学研究財団 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」

介護サービスを受けるための手続きを行う

在宅療養の場合には、訪問看護や訪問リハビリテーションなどの介護サービスの利用を開始するための手続きも必要です。
手続きの内容は、利用するサービスや患者様の状況によっても変わるため、かかりつけの医療機関の相談員に確認することをおすすめします。

ALSの患者様の生命維持を図ることはもちろん、QOL(生活の質)の維持もサポートできるように多職種のスタッフで支援する体制の構築が大切です。

ALS患者の介護で困ったときの対応

ALSの患者様を支える方としては、快適な生活をサポートするために悩むことも多くあるでしょう。
そのような場合には一人で抱え込まず、以下の制度の利用をご検討ください。

【ALS患者の介護で困ったときの対応】

  • 主治医に相談する
  • 難病相談支援センターに相談する
  • レスパイト入院を検討する

主治医に相談する

治療方法をはじめとする、ALSの医学的な疑問や悩みは主治医に相談することをおすすめします。
「薬がうまく飲めない」「呼吸が大変そうだ」などを主治医に相談することで、アドバイスやほかの治療方法の検討を通して、悩みの解消へと円滑に導いてくれます。
内服する薬や治療などは、患者様の生活の快適さにも大きく関わってくる部分なので、定期外来のようなタイミングを利用してこまめに相談しておきましょう。

難病相談支援センターに相談する

ALSの患者様の介護に関する悩みを、“難病相談支援センター”に相談するのも一案です。

難病相談支援センターは、ALSを含む難病の患者様や介護にあたる周囲の方が、安心して暮らせるように相談を受け付けている施設です。
各都道府県に設置されており、所属する保健師や社会福祉士などの資格を持つスタッフが、情報の提供やアドバイスを行ってくれます。

また、ALSの患者様や周囲の方たちを集めた交流会が開催される場合もあります。
同じ境遇だからこそ分かち合えることが多く、「悩んでいるのは一人じゃない」という安心感も得られるため、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

レスパイト入院を検討する

介護の悩みに疲労を感じている場合には、“レスパイト入院”の実施も検討したいところです。
レスパイト入院とは、介護者が休憩や息抜きをするために、在宅療養中の患者様を一時的に病院で受け入れる制度です。

ALSの患者様の介護を続けていると、疲労が溜まってしまうことも少なくありません。
介護は長期的なものとなるため、疲労が限界を超えてしまう前に、こうした仕組みを活用することが非常に重要です。

ただし、レスパイト入院の受け入れを行っていない病院もあります。
そのため、限界を迎える前にかかりつけの医療機関や難病相談支援センターなどで相談し、受け入れ可能な病院をあらかじめ探しておくことをおすすめします。

ALSは、2~5年程度で人工呼吸器が必要となる状態まで進行する

ALSを発症すると、個人差はあるものの、一般的には2~5年程度で人工呼吸器が必要になる、もしくは亡くなってしまうとされています。
多くの場合、初期症状としては、「手が動かしづらい」「ろれつがうまく回らない」など身体の1箇所で障害がみられます。
そこから数年のうちに障害が現れる箇所が増え、症状も重くなり、末期には寝たきりの状態になってしまうのです。

このように、ALSは進行速度の比較的速い疾患ですが、治療によって進行を遅らせることが期待されています。
その治療方法の一つが、ひとのわメディカルでも提供している再生医療です。
ALSの患者様のQOLを保つ、新しいアプローチに興味のある方は、ぜひ当院にお越しください。

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院長 瀨田康弘の写真

瀨田 康弘

ひとのわメディカル 院長|再生医療認定医

神経疾患・難病への再生医療アプローチを専門とする。ALS特定臨床研究(jRCT031230731)の主研究者。