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ALS患者様の寿命はどのくらい?治療法やリハビリ方法を解説

ALSは国の指定難病に認定されており、現代医療では完治が見込めません。
そんなALSをご自身または身近な方が発症してしまった場合、現実的な問題として「あと何年生きられるのか?」は、その後のためにも把握しておく必要があります。

本記事では、ALS患者様の一般的な寿命を説明したうえで、少しでも長生きするための治療法やリハビリ方法も紹介いたします。
今回ご紹介する情報が、ALS治療に前向きに臨むための後押しとなれば幸いです。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、手足やのど、舌などの筋肉が徐々に委縮してしまう病気です。
このように聞くと筋肉に関する病気のように思えますが、実際には、“運動ニューロン”という神経に障害が発生することで引き起こされるものです。

運動ニューロンは本来、「筋肉を動かせ」という脳からの命令を末梢神経に伝えるはたらきを担っています。
しかし、なんらかの要因でこの運動ニューロンのはたらきが弱まり、脳からの命令が伝わらなくなると、筋肉を思うように動かせなくなってしまいます。
その結果、使われなくなった筋肉が萎縮してしまうのです。

ALSの発症には、神経の老化や興奮性アミノ酸の代謝異常、また酸化ストレスなどが関連していると考えられていますが、詳細な原因はまだ明らかとなっていません。
完治が望める治療法もまだ確立されておらず、現状は対症療法によって症状の進行を抑制することしかできないため、国の定める指定難病に認定されています。

関連記事:【ALS確率】ALSの生涯リスクを徹底検証!知られざる発症率

ALS患者様の寿命はどのくらい?

ALSを発症された方は、最終的には自力での呼吸が困難となり、人工呼吸器を使わなければ2~5年ほどで亡くなられてしまう傾向にあります。
ただし症状の進行には個人差があり、1年ほどで呼吸不全の状態に陥ってしまう方もいれば、人工呼吸器を使わずに10年以上生存された方もいらっしゃいます。
これは、ALSの中でも、いろいろな型があり、進行の進み方には違いがあると考えられています。

関連記事:ALSの進行速度は?初期・末期の症状を紹介

ALSの末期症状

ALSが進行し末期の状態になると、呼吸不全を含めた以下の症状が表れます。
ここでは、各症状の詳細や、患者様自身や周囲の方が行える対応を解説します。

【ALSの末期症状】

  • 身体を動かすことが困難になる
  • 言葉を発することが困難になる
  • コミュニケーションが取りにくくなる
  • 食べ物や水分が飲み込みにくくなる
  • うまく呼吸ができなくなる

身体を動かすことが困難になる

初期段階のALSでは人によって症状の出る箇所が異なり、手足から違和感が出始めるケースもあれば、話しにくい・物を食べにくいなどの症状から始まる場合もあります。
しかし、ALSが進行すると最終的には全身の筋肉が萎縮し、身体全体を動かすことが困難になってしまうのです。
この状態では、食事や排泄といった日常的な動作すらままならないので、ご家族の方や介護スタッフのケアが必要不可欠となります。

言葉を発することが困難になる

ALSの進行によって延髄から出ている脳神経に障害が発生すると、舌や口蓋、咽頭、喉頭など、口からのどにかけて存在する部位の運動機能が低下します。
この状態になると、構音障害、つまり言葉を発することが難しい状態になってしまいます。
会話による意思の疎通が困難となるため、言語以外を用いるコミュニケーション方法を模索しなくてはなりません。

コミュニケーションが取りにくくなる

ALSの末期では、身体機能の低下により筆記でのやりとりやボディランゲージが難しいうえに、会話も困難になるため、コミュニケーション全般に支障をきたしてしまいます。
この状態で可能なコミュニケーション方法としては、目や口の動きで意思を伝える、また透明な文字盤を用いるなどの方法が挙げられます。

さらにコミュニケーション支援技術の発展により、末期であっても意思疎通を保ち、自己決定を支える手段が増えてきました。
視線をカメラで読み込む装置や自分の声を残す「ボイスバンキング」があげられます。
センサーも高感度のものもあり、指をほんの少し動かすだけで押せるスイッチもあります。

これらの方法で、一般的なご家庭でも難なく実施することが可能です。

食べ物や水分が飲み込みにくくなる

脳神経に障害が生じると、構音障害だけではなく、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる“嚥下障害”も表れるようになります。
ALSが進行するとこの嚥下障害の影響が強まり、患者様が誤嚥してしまう危険性が高くなるため注意が必要です。

嚥下障害の予防策としては、食事をペースト状にするなど、口に入れる食べ物・飲み物を飲み込みやすい形状にする方法が効果的です。
また、誤嚥が原因となる肺炎を防ぐためにも、口内環境を常に清潔に保つことも意識しましょう。

嚥下障害が悪化すると、最終的には口から食事を摂ることが難しくなり、栄養不足に陥ってだんだんと衰弱していってしまいます。
経鼻胃管や胃ろうなど、口以外の箇所から栄養を摂れるようにする処置を施せば、この状態でも栄養を摂取しつづけることが可能です。

患者様本人の意思や主治医の意見も踏まえたうえで、慎重に対応指針を決めることが大切です。

うまく呼吸ができなくなる

ALSによって呼吸を行うための筋肉が麻痺すると、呼吸すら難しくなってしまいます。

初期段階では酸素マスクによる酸素投与での対処が可能ですが、症状が悪化し重度の呼吸不全が生じた場合には、人工呼吸器などの補助換気療法が必須となります。
しかし、それでも症状を改善させることはできず、最終的には気管切開せざるを得ない状況になってしまうことがほとんどです。

上記の対応を行えば、患者様はより長い期間生きていくことが可能となります。
しかし、気管切開にもメリットデメリットがあります。
経鼻胃管や胃ろうなどと同じように、入念な検討なしに方針を決めることは望ましくありません。
患者様本人や主治医としっかりと話し合ったうえで、実施するかどうかを判断しましょう。

関連記事:ALSの症状とは?検査方法や治療法を解説

ALSの治療法

冒頭でお伝えした通り、ALSの完治が見込める治療法はまだ確立されていません。
しかし、以下の治療法によって症状の進行を遅らせることはできます。

【ALSの治療法】

  • 再生医療
  • 薬物療法
  • 対症療法
  • 手術療法

再生医療

ALSの治療法として近年注目を集めているのが、再生医療です。

再生医療は、患者様の細胞をもとに培養した幹細胞や、培養時に得られる上清液を用いて、神経の保護や炎症の抑制を行う治療法です。
従来の医療では対処が難しかった難病も治療できる可能性があり、国内外で研究が進められています。
当院の研究結果で、ALSに対しても一定の治療効果が認められたケースがあり、今後の研究次第では有用な治療法になると期待しております。

関連記事:再生医療の効果とは?5つの治療方法の特徴と副作用・デメリット

薬物療法

ALS治療に用いられる従来の方法としては、薬物療法が挙げられます。
主に以下の薬が使われており、ALSの進行を抑制するために、後述する対症療法やリハビリなどとあわせて投与されます。

【ALSの進行を抑制する薬の一例】

薬の名称

特徴

リルゾール

・シナプスからのグルタミン酸放出を阻害する作用によって、神経を保護するはたらきがあると考えられている
・重篤な肝機能障害がある場合は使用できない

エダラボン

・抗酸化作用によって、ALSでの運動機能障害の進行を抑制できると考えられている
・重篤な腎機能障害がある場合は使用できない

高用量メコバラミン

ALSによる機能障害の進行を抑制する効果が期待されている

上記にも記載があるように、一部の薬は患者様の抱えている持病次第では投与できないため注意が必要です。
投与するかどうか、またそのタイミングなどは、主治医と相談のうえ慎重に判断しましょう。

対症療法

ALSに伴う日々の苦痛や、生活様式の変化によって引き起こされる精神的な負担を軽減する際は、対症療法が用いられます。

先に紹介した、経鼻胃管や胃ろうによる栄養摂取、また人工呼吸器での呼吸補助などもこの対症療法の一つです。
このほか、筋肉のつっぱり感に対しては理学療法やマッサージなどが、精神的な不調には抗不安薬の投与やカウンセリングが効果を発揮します。

患者様が日々の生活を少しでも快適に過ごせるように、状況に応じて適切な処置を選択する、あるいはいくつかの処置を組み合わせることが大切です。

手術療法

ALSが進行して各症状が悪化してしまった場合の治療法としては、手術療法が効果的です。
たとえば、呼吸不全が原因で窒息する危険性があるなら、気管切開によって気道を確保します。

ALSのリハビリ

以下のリハビリを行うことで、ALSによって生じる筋肉や関節の痛みの軽減、また運動や食事といった日常生活での動作の改善を図れます。
ただし、過度なリハビリは症状を悪化させるおそれがあるので、その内容や頻度を考慮したうえで、適切な計画を立てることを徹底しましょう。

【ALSのリハビリ】

  • 運動療法
  • 呼吸リハビリテーション
  • 摂食嚥下訓練

運動療法

ALSによる身体機能の低下を防ぐリハビリとして、運動療法が存在します。

ALSにおける運動療法のなかでも、全病期を通して有効と考えられているのが、ROMエクササイズです。
ROMとは「関節可動域(range of motion)」を意味し、それが示す通り首や肩、手足の関節の可動域を広げる運動を行います。
関節の可動域を広く保つことが、呼吸機能の低下防止、さらには座った際の姿勢の維持などにつながるのです。

このほか、筋力低下に伴う転倒の防止や、QOLの維持を目的に筋力増強運動を行う場合もあります。
ただし、運動負荷がかかり過ぎるとかえって筋力が低下しかねない点には、注意しましょう。基本的には、次の日に残らない強さのリハビリが推奨されます。
主治医にも相談のうえ、適切なリハビリメニューを検討することが大切です。

HAL

HAL(Hybrid Assistive Limb)は、装着型のロボットスーツで、身体を動かそうとしたときに生じる「生体電位信号」を読み取り、装着者の動きを補助する最新のリハビリ機器です。
ALSのリハビリにおいて、筋力低下によって自力での歩行や立ち上がりが困難になってきた場合に、動作の補助・維持に役立つます。

人が手足を動かそうとすると、脳から筋肉へ「動け」という微弱な電気信号が送られます。
ALS患者では、筋力の低下により信号に対する動きが弱くなり、思い通りに身体が動きづらくなりますが、HALは皮膚表面にあるその微弱な信号を読み取ることで、モーターが動作をサポート。
本来の「動かそうとする力」を引き出し、身体が本来持つ機能の維持や改善をめざします。

呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは、呼吸不全の影響を緩和するためのリハビリです。
口をすぼめて呼吸する、またおなかの筋肉を意識して腹式呼吸を行うなどの訓練によって、少しでも楽に呼吸できる方法を身につけていきます。
ご家族の方のサポートのもと行うことも可能ですが、訪問介護のスタッフを呼んで、排痰なども含めてサポートしてもらうほうがより効果的なリハビリとなるでしょう。

摂食嚥下訓練

嚥下障害を放置すると、誤嚥性肺炎の発症や栄養不足による衰弱などを引き起こしてしまいます。
そのような事態を防ぐうえで、食べ物や飲み物を上手に飲み込めるようにするための、摂食嚥下訓練は欠かせません。

摂食嚥下訓練には、“直接訓練”と“間接訓練”の2種類が存在します。
直接訓練は、食べ物を実際に使って、飲み込みやすい体位や食事の際の姿勢などを調整し、学んでいく訓練です。
この性質上、基本的にはまだ自力で食事を摂れる患者様に対して行います。

対して間接訓練では、食べ物は使わない方法で摂食嚥下機能の改善を目指します。
ストローでコップの水を泡立てるブローイング訓練や、仰向けに寝て頭を上げたうえで、つま先を見るようにする頭部挙上訓練などが代表的な訓練方法です。
自力で食事が摂れなくなってしまった患者様を対象としており、残された嚥下機能がそれ以上失われないようにすることを目的としています。

ご家族がALSになったらやるべきこと

ご家族の方がALSを発症してしまった場合、患者様本人だけではなく、周りのご家族の方にもどうしても負担がかかってしまいます。
そうした負担を少しでも軽減できるように、次に記す3つの対応を行いましょう。

【ご家族がALSになったらやるべきこと】

  • 療養環境を整える
  • 訪問看護・介護サービスを受けるための手続きを行う
  • 特定医療費を受給するための手続きを行う

療養環境を整える

ALS患者様の療養は自宅で行うことが多いため、まずはご自宅を療養に適した環境へと整えましょう。
具体例としては、通常のベッドでは患者様を正しく介護できない可能性があるので、介護用のベッドをレンタルする、といった対応が挙げられます。
このほか、患者様が室内をスムーズに移動できるように、段差がある箇所を可能な限りスロープに変える、また階段に手すりを備え付けるといった対応が必要になる場合もあります。

訪問看護・介護サービスを受けるための手続きを行う

自宅療養を行う場合は、訪問看護・介護サービスの利用もおすすめします。
身体介護や生活援助などをプロに任せたほうが、予期せぬトラブルが発生する心配もなく、患者様やご家族の方の負担も少なくなります。

スタッフが来ない日などもありますので、食事の介助や喀痰の吸引などをご家族の方もできるように練習をしていきましょう。
ご家族の方も介護の正しい知識や手順を把握し、いざというときに患者様をサポートできるようにしておくことが、ALSの自宅療養では非常に大切なのです。

特定医療費を受給するための手続きを行う

ALSの重症度が一定以上である、また医療費総額が33,330円を超える月が年に3回以上ある場合は、医療費の助成を受けられる可能性があります。
治療が長期にわたる可能性のあるALSでは、医療費の負担も相当なものとなりますから、こうした制度は積極的に利用したいところです。
医療費助成制度の詳細は、各都道府県・指定都市の窓口にて案内があるので、詳しくはそちらからご確認ください。

参照:難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」

ALSを発症すると人工呼吸器を使わなければ2~5年ほどで亡くなってしまうが、個人差もある

ALSを発症すると最終的には呼吸不全の状態に陥り、人工呼吸器を使わなければ2~5年ほどで亡くなられてしまう傾向にあります。
一方で、人工呼吸器を使わずに10年以上生存された方もいるなど、症状の進行には個人差があることも事実です。
実際、本記事で紹介した各種治療法やリハビリ方法を行うことで、症状の進行をある程度抑制できます。
ALSを発症したとしても希望を捨てずに、少しでも長生きしようと前向きな気持ちを持つことが重要なのです。

なお、ひとのわメディカルでは、ALSの治療法として、幹細胞培養上清液を使用した再生医療を提供しております。
従来医療とは違ったアプローチ方法をご希望であれば、一度ご相談ください。

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院長 瀨田康弘の写真

瀨田 康弘

ひとのわメディカル 院長|再生医療認定医

神経疾患・難病への再生医療アプローチを専門とする。ALS特定臨床研究(jRCT031230731)の主研究者。