
認知症の後遺症などで介護が大変な方に向けて、認知症の周辺症状について解説いたします。
脳の機能が低下してしまった場合、周囲の方は理解できない症状に困ることが少なくありません。
認知症では「周辺症状」と呼ばれる行動が見られ、「改善の方法はあるのか」「なぜこのような行動をとるのか」と戸惑うこともあります。
今回の記事では、認知症で見られる8つの周辺症状の特徴と、周辺症状に対応するためのポイントをご紹介していきます。
参考にしていただければ、症状の緩和が見込める対応方法が見つかったり、治療法についておわかりいただけたりするはずです。
目次
認知症の周辺症状とは

周辺症状とは、認知症の中核症状によって引き起こされる症状のことを指します。
まずは認知症の中核症状について知っておきましょう。
【認知症の中核症状】
- 記憶障害:新しいことを記憶できず、覚えていたことも思い出せなくなる
- 見当識障害:時間・季節感・方向感覚が失われたり自分と周囲の人との関係性がわからなったりする
- 理解・判断力の障害:日常生活の中での理解・判断に時間がかかるようになる
- 実行機能障害:計画を立てて、計画通りに行動する能力が低下する
- 感情表現の変化:周囲の状況が読めなくなり時として正しい感情表現ができなくなる
認知症になると、上記のような5つの中核症状が現れます。
そして中核症状に対して、患者様ご本人の性格や周辺環境、人間関係が加わり、さまざまな周辺症状が見られるようになるのが一般的です。
つまり認知症の周辺症状とは、中核症状に起因して生じる二次的な症状と位置づけられます。
認知症の周辺症状の種類

それでは認知症の周辺症状について見ていきましょう。
周辺症状は個人差がありますが、大きく8つに分類されます。
種類1:不安・抑うつ
まずは不安感が強くなったり、抑うつ状態になったりする症状についてです。
認知機能の低下にともない、日常生活でできないことが増えてくると不安感や落ち込みを感じやすくなることから生じます。
たとえば毎日料理をしていた人が味付けに失敗したり、手順を忘れたりすると、落ち込むこともあります。
そのような契機によって不安感が強くなったり、抑うつ状態になったりする方は少なくありません。
種類2:妄想
妄想は現実的ではないことを、現実だと思い込んでしまう症状のことを指します。
被害妄想や物盗られ妄想などが代表的です。
財布を置いた場所を忘れ、家族が盗んだと誤解したり、周囲に陥れられていると感じたりするような症状が現れることもあります。
自分がしたはずがない、だとすれば他人がしたのだとの考えにより妄想が生まれることがあります。
種類3:幻覚
存在しないものが現実に見えているように感じられる状態が幻覚です。
認知機能の低下によって引き起こされ、幻覚以外に幻聴や幻味、幻臭、幻触が併発することもあります。
よくある症状としては、小さな子供がそばで遊んでいる、小さな虫がたくさんいるなどの幻覚です。
認知症全般において幻覚が生じる可能性がありますが、レビー小体型認知症において特に多く見られます。
種類4:徘徊・多動
外出をして徘徊をしたり、部屋の中をうろうろと動き回ったりする認知症の周辺症状です。
認知機能の低下や見当識障害によって起きることが多く、外に出たまま自宅への帰り道がわからなくなるケースも見られます。
本人は目的を持って外出しても、途中でその目的を忘れてしまうことがよくあります。
そして結果的に徘徊となり、保護されることもあるでしょう。
室内での多動は、徘徊の予兆であると考えられます。
参照:国立長寿医療研究センター:(PDF)認知症による行方不明への備え
種類5:暴力・暴言
人によっては暴力や暴言が周辺症状として現れることがあります。
認知能力の低下によってできないことが増えたり、記憶力が低下したりしたことによって不安になり引き起こされることが多い症状です。
また感情を制御する能力が低下していることも原因のひとつでしょう。
本人の不安や苛立ちを理解することで、暴力や暴言の軽減につながる可能性があります。
参照:国立長寿医療研究センター:デイサービスではニコニコしていますが、家に帰ると家族に暴言を吐きます。どうしてでしょうか
関連記事:【医師監修】認知症の暴力を抑える薬とは?種類や効果について解説
種類6:睡眠障害
睡眠障害はアルツハイマー型認知症でよく見られる周辺症状です。
アルツハイマーはアミロイドβたんぱく質やタウたんぱく質の蓄積によって引き起こされると考えられています。
これらのタンパク質の蓄積に睡眠が関連する可能性に注目が集まっています。
このことから、睡眠障害はアルツハイマー型認知症に伴いやすい症状とされています。
さらに認知症の周辺症状を助長する要素であるとも言われています。
種類7:不潔行為
不潔行為とは、尿を撒く、排泄物を触るといった行動を指します。
トイレの水を流さない、整髪をしない、お風呂に入らないなども不潔行為の一種です。
認知症の中核症状によって認識力が低下し、自己管理ができなくなることが原因であるとされています。
種類8:介護の拒否
認知症における周辺症状の一つに、介護拒否があります。
自己管理ができなくなった認知症の方を家族の方が介護しようとしますが、介護されることを拒否してしまいます。
介護拒否の原因は多岐にわたりますが、介護者のイライラした様子を察して拒否することも珍しくありません。
たとえば同じことを何回も聞かれると、イライラして口調がきつくなってしまうこともあるでしょう。
本人は「理解できず困っているために尋ねている」という状況にあります。
困っているときにイライラされたり怒られたりすることで、介護されたくない気持ちが生じて拒否する方もいらっしゃいます。
認知症の周辺症状が現れる時期

認知症の周辺症状が現れる時期には個人差があります。
認知症は初期・中期・末期の3つの段階に分けられますが、それぞれの段階でどのような認知症周辺症状が現れるのか知っておきましょう。
認知症初期
まずは認知症初期に見られる周辺症状をご紹介します。
【初期の周辺症状】
- 不安感
- 抑うつ
- 妄想
- 記憶障害
初期に現れる症状は精神的なものが多く、1日中ふさぎ込むような抑うつ状態になったり、不安感が高まったりします。
また、不安感と記憶障害が重なることで、妄想が生じることもあります。
認知症初期では記憶障害・記銘力障害・見当識障害が起こるため、付随する周辺症状が現れがちです。
認知症中期
続いては認知症中期に見られる周辺症状についてです。
【中期の周辺症状】
- 幻覚
- 徘徊
- 睡眠障害
- 不安感
- 抑うつ
- 失行
- 失認
中期になると精神症状が強くなってきて、さらに行動に問題が生じるようになりがちです。
常に幻覚が見える、徘徊するなどの行動が頻繁に見られることがあります。
また食事や着替え、トイレなどの日常動作がうまくできなくなるケースも見られます。
ご家族の方による介護が必要な状態となるのが中期です。
認知症末期
最後に認知症末期の周辺症状について解説します。
【末期の周辺症状】
- 人格の変化
- 無言
- 無動
- 失外套症候群
- 不潔行為
認知症末期になると、会話や動きがなくなり、行動できなくなることが少なくありません。
人格の変化が見られる場合もあります。
排泄物を食べたり触ったりすることもあるかもしれません。
周辺症状が多く現れるようになり、それにつれて介護の負担も上がっていく傾向にあります。
参照:国立長寿医療研究センター:認知症の精神症状・行動異常(BPSD)と入院治療について
関連記事:【医師監修】認知症の症状は急激に悪化する?重症度や疾患別に症状を解説
認知症の周辺症状が現れる原因

認知症で周辺症状が現れる原因は、中核症状により不安感が高まるためです。
中核症状は「記憶障害」「見当識障害」「理解・判断力の低下」「実行機能障害」「感情表現の変化」の5つ。
中核症状が進行すると、日常生活に支障をきたしたり、人間関係に影響を及ぼしたりすることがあります。
その結果、ご本人は「これまでできていたことができない不安」や「周囲の人の対応の変化」を感じるようになります。
その変化による強いストレスや不安が周辺症状を引き起こす原因であるとされています。
認知症の周辺症状に対応する際のポイント

認知症の周辺症状はストレスや不安により生じることが多いものです。
それでは、周辺症状に適切に対応するにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
認知症の周辺症状に対応する際の4つのポイントについて見ていきましょう。
ポイント1:生活環境を変えない
まずは生活環境を変えないことが大切です。
環境が変わると不安感がより高まってしまう可能性があります。
ご本人が安心して、ストレスなく暮らせるよう、生活環境を変えることは控えてください。
ポイント2:本人の気持ちに配慮する
ご本人の気持ちに配慮することもポイントのひとつです。
認知症の周辺症状が現れると、介護者が苛立ちを感じる場面が増えることもあります。
しかし、ご本人は何もわからないわけではありません。
認知症ではない方と接するときと同様に、ご本人の気持ちに配慮し、安心感を与える対応を心がけましょう。
ポイント3:否定しない
周辺症状によって理解できない行動があったとしても、否定しないようにしてください。
否定されるとより不安感やストレスが大きくなってしまいます。
ご本人の話をしっかりと聞き、自尊心を傷つけないように接することが周辺症状の低減にもつながります。
ポイント4:症状が表れる原因を考える
認知症の方と接する際には、周辺症状が現れる原因を考えてみてください。
周辺症状は周りの環境によって引き起こされることも少なくありません。
そのため、症状が現れた際には原因を探ることで、対処しやすくなる可能性があります。
認知症の治療方法

認知症の周辺症状にお困りでしたら、治療を検討することが推奨されます。
代表的な治療法は次の3つです。
関連記事:認知症予防のための運動と脳トレ10選と継続のためのポイントについて
治療方法1:薬物療法
内服薬の服用により症状の進行を抑えるのが薬物療法です。
抗不安剤や抗てんかん薬、漢方薬を処方して、認知症の周辺症状を抑制します。
過活動症状に対する薬剤と、低活動状態に対する薬剤があるため、症状に応じて適切な薬剤が処方されます。
治療方法2:リハビリ療法
リハビリ療法は低下した身体能力や脳機能を改善させるためのものです。
体操やストレッチ、ドリルやクイズへの取り組み、回想、作業療法などが行われます。
身体や脳は使うほどスムーズに動くようになっていくため、徐々に認知機能と身体能力の回復を促す治療法とされています。
治療方法3:再生医療
再生医療は神経や組織、細胞の修復を促すための治療です。
神経を修復する幹細胞上清液を投与し、症状の改善を目指します。
認知症では神経や組織が損傷してしまっていることが多いため、一定の効果が得られれば、改善・維持を目指す治療の一つとみなされます。
関連記事:再生医療の効果とは?5つの治療方法の特徴と副作用・デメリット
関連記事:再生医療にリスクはある?3つのリスクと事前に知っておきたい注意点
認知症の周辺症状には適切な対応と治療を試みて

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、認知症の周辺症状についてご理解いただけたと思います。
周辺症状は介護をする方にとっては大変なものでしょうが、対応や治療次第で改善される可能性もあるでしょう。
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