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パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病は、脳の「黒質」にあるドパミン神経細胞が減少することで起こる、進行性の神経疾患です。
主な運動症状は次の4つです。
- 振戦(しんせん):手足がふるえる
- 無動、寡動:動きが遅くなる、少なくなる
- 筋強剛(きんきょうごう):筋肉がこわばって動かしにくくなる
- 姿勢反射障害:バランスが取りにくく転びやすくなる
さらに運動症状以外にも、小声になる、表情が乏しくなる、便秘、嚥下障害(飲み込みにくさ)など、全身にさまざまな症状がみられます。
パーキンソン病の症状は、毎日の「食べる」動作にも大きく影響します。
特に手先の動きと飲み込みの2点において、早期から工夫を始めることが大切です。
① 手先の動きが不安定になる
振戦や筋強剛、無動によって、次のような困りごとが増えてきます。
- 箸がうまく使えない
- スプーンから食べ物がこぼれる
- 器を持つ手が不安定になる
「少し食べづらくなったかも」と感じた段階が、ひとのわメディカルと一緒に工夫やリハビリを検討する良い目安です。
② 嚥下(えんげ)障害が起こる
食事は「噛む→まとめる→飲み込む」という複雑な動きの連続です。
病状の進行によりこの動きが弱くなると、
- 口の中に食べ物が残る
- 水分でむせる
- 飲み込むのに時間がかかる
といった症状が出ることがあります。
嚥下障害は誤嚥性肺炎のリスクにもつながるため、早めの対応が推奨されます
食器を工夫して患者様本人で食事する訓練を行う
食事リハビリの目的は、「安全に」「自分の力で」「必要な栄養を摂り続ける」ことです。
無理に頑張るよりも、今の状態に合った工夫を取り入れましょう。
食器を工夫して、できるだけ自分で食べる
無理に箸にこだわる必要はありません。
自助具(便利な食事道具)を使うことで、食事がぐっと楽になります。
具体例:柄が太く握りやすいスプーン、縁が立ち上がった深皿、滑り止めマット
「自分で食べられた」という自信は、生活の質(QOL)向上に直結します。
食事の際の姿勢に気をつける
むせが気になる場合は、まず座り方を見直します。
- 椅子に深く座り、骨盤を安定させる
- 足の裏を床につける
- あごを軽く引く(上を向くと誤嚥しやすいため)
喉の体操を行う
喉の体操を取り入れることも大切です。
食事前に「飲み込む準備運動」を行うと、嚥下が安定しやすくなります。
準備運動として、以下の体操やマッサージが効果的です。
- パタカラ体操:「パ・タ・カ・ラ」とはっきり発声
- 嚥下おでこ体操:おでこと手で押し合いながら飲み込む
- アイスマッサージ:冷刺激で嚥下反射を促す(専門家の指導のもとで実施)
パーキンソン病に食事制限は必要?
基本的に、パーキンソン病そのものに厳しい食事制限はありません。
ただし、薬の効果や症状を管理するために知っておきたいポイントがあります。
ポイント①タンパク質とL-ドパ製剤の関係
レボドパ(L-ドパ)は、タンパク質と同時に摂ると吸収が遅れることがあります。
服用タイミングは主治医の指示に従いましょう。
ポイント②便秘への対策
腸の動きがゆっくりになるため、食物繊維、水分、無理のない運動を意識して早めに対処することが重要です。
ポイント③食形態の調整
むせやすい場合は、パサつく食品やさらさらした水分が難しくなります。
とろみの使用などは、専門職(言語聴覚士など)の評価を受けるのが安心です。
パーキンソン病の患者様に必要な食事動作以外のリハビリ
パーキンソン病では、日常生活全体を支えるために、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)を組み合わせたアプローチが有効です。
運動療法
パーキンソン病のリハビリでは、主に
- 歩行
- 姿勢
- 大きな動き
を維持することを目的とします。
筋肉のこわばり(筋固縮)や前かがみ姿勢、歩幅の低下やすくみ足といった症状に対して、重点的にアプローチします。
基本となるリハビリの考え方
① 体をやわらかくする
関節可動域運動やストレッチ、体幹のひねり運動により、体のこわばりを防ぎます。
② 姿勢を整える
背筋を伸ばす練習や骨盤の調整を行い、前かがみ姿勢を予防します。
③ 歩きを安定させる
メトロノームや掛け声などの外部刺激(キュー)を活用し、すくみ足の改善を図ります。
④ 体力、バランスを保つ
有酸素運動や立ち座り動作を通して、転倒しにくい体づくりを行います。
家庭でも取り入れやすいリハビリメニュー例 「特別な訓練」と構えすぎず、日々の生活動作に少しだけリハビリの視点をプラスしてみましょう。
自宅でできるリハビリメニュー例
① 柔軟性を高める
内容:ストレッチ、関節可動域運動、体幹のひねり
やり方:椅子に座り、深呼吸をしながら体を左右にひねる、両手を上に伸ばす
効果:体のこわばりをやわらげ、動きをスムーズにする
② 姿勢を整える(前かがみ予防)
内容:姿勢矯正、骨盤調整
やり方:壁に背中をつけ、後頭部や肩甲骨、お尻を壁に当てる
効果:猫背や前かがみを防ぎ、呼吸や嚥下もしやすくなる
③ 歩行を安定させる
内容:リズム歩行(キュー活用)
やり方:「イチ、ニ」と声を出す、手拍子や音楽に合わせて歩く
効果:すくみ足を防ぎ、スムーズな一歩を出しやすくする
④ 体力を維持する
内容:軽い有酸素運動
やり方:散歩や座ったままの足踏みなどを無理のない範囲で行う
効果:血流改善と体力維持につながる
⑤ 転倒を予防する
内容:バランス訓練、立ち座り練習
やり方:支えにつかまりながらつま先立ちやゆっくり立ち上がる練習
効果:下肢筋力を強化し、転倒リスクを軽減する
作業療法
主な内容
着替え(ボタンの掛け外し) や入浴動作、書字、家事動作、趣味活動の継続、さらに自助具の選定、手すり設置などの環境調整や転倒予防の住環境アドバイス なども行います。
「できなくなった」ではなく、「今の状態に合った方法に調整する」ことが目的です。
言語療法(言語聴覚療法:ST)
パーキンソン病では、「声が小さくなる(小声症)」「早口になる」「言葉が不明瞭になる」「むせやすくなる」といった症状がみられます。
言語聴覚療法は、「話す力」と「飲み込む力」の両方を支えるための大切なリハビリです。
発声訓練:しっかりとした声を届ける
内容:腹式呼吸、大きな声を出すトレーニング(例:LSVT LOUD®など)。
ポイント:声が小さくなるのは、喉の問題だけでなく「脳の司令で動きが小さくなる」という病気の特性が関係しています。
あえて「大きく、はっきり」声を出す練習が、コミュニケーションを守る鍵となります。
構音(話しことば)訓練:伝わる会話を維持する
内容:はっきり発音する練習、話す速さの調整。
ポイント:パーキンソン病では自分では気づかないうちに「早口」になることがあります。
「ゆっくり、区切って話す」ことを意識し、相手に伝わりやすいリズムを整えます。
表情、口腔運動:表情と飲み込みを支える
内容: 表情筋や唇、舌のトレーニング。
ポイント:表情が乏しくなる症状(仮面様顔貌)を改善する訓練は、見た目の印象を明るくするだけでなく、嚥下(飲み込み)機能の維持にも直結しています。
嚥下訓練:安全に食べ続ける
内容: 飲み込みの評価、嚥下運動の練習、適切な食形態(とろみ等)の提案。
ポイント:「むせが増えた」「食事に時間がかかる」のは、飲み込みの力が変化しているサイン。
専門職による評価に基づき、安全に食べるための対策を行います。
咳(せき)、呼吸の訓練:肺炎のリスクを防ぐ
内容:効果的な咳の練習、呼吸筋トレーニング(EMSTなど)。
ポイント:万が一食べ物が気管に入りそうになったとき、自力で外へ押し出す力(咳き込む力)を保つことは、誤嚥性肺炎の予防に極めて重要です。
頸部〜肩、胸郭のストレッチ:リハビリの土台を作る
内容:首や肩、胸まわりのストレッチ、胸を開く姿勢づくり。
ポイント:姿勢が整うことで呼吸が深くなり、声や飲み込みの練習が「より効果的に行える状態」になります
パーキンソン病のリハビリを行う際のポイント

パーキンソン病のリハビリで大切なのは「量」ではなく、安全に、無理なく継続することです。
ポイント①医師やリハビリテーションの専門家に事前に相談する
症状の進行や薬の効き方は個人差があります。
- 運動量
- 転倒リスク
- 嚥下
- 呼吸への影響
などを確認し、PT、OT、STと連携して、その方に合ったメニューを安全に組み立てましょう
ポイント②無理のない範囲で実施する
薬が効いている時間帯(オン)に行い、疲れすぎないことが大切です。
痛みや強いだるさが出た場合は中止し、その日の体調に合わせて調整しましょう。
ポイント③継続して行う
短期間で劇的に変わるものではありませんが、毎日少しずつ続けることで、数年後の身体機能や生活の質(QOL)に大きな差が出ます
ALSのリハビリとあわせて行いたい治療法
リハビリと並行して、適切な医療的治療を組み合わせることが、生活の質(QOL)を守る鍵になります。
再生医療
再生医療は、失われたドパミン神経細胞そのものを補うことを目指す、将来的な根本治療として注目されている分野です。
現在、京都大学などを中心に、iPS細胞由来のドパミン神経細胞を脳へ移植する治験が進められています。
ただし現時点では、標準治療として確立されたものではありません。
長期的な安全性や有効性の確認が必要であり、継続的な臨床研究が進められている段階です。
治療を検討する際は、必ず主治医と十分に相談しましょう。
薬物療法
パーキンソン病の基本治療は薬物療法です。
不足しているドパミンの働きを補い、「動きやすい状態(オン)」をつくることで、日常生活のしやすさやリハビリの効果にもつながります。
- レボドパ(L-ドパ)製剤:体内でドパミンに変わる薬で治療の中心
- ドパミンアゴニスト:ドパミン受容体を刺激しL-ドパを補う
- MAO-B阻害薬、COMT阻害薬:効果を長持ちさせる
- アマンタジン、抗コリン薬:ふるえ等の症状に応じて用いられることがある
デバイス補助療法(DAT)として、飲み薬だけで症状の波の調整が難しい場合に、LCIGやアポモルヒネ持続皮下注入療法などが検討されることがあります(適応には評価が必要です)。
※薬とリハビリは車の両輪
オンの時間帯にリハビリを行うと、動作練習の質が上がりやすくなります。
薬が効きにくいと感じる場合は、服薬時間や食事内容、効果の出方を記録して相談すると調整の手がかりになります。
手術
薬物療法だけで症状コントロールが難しい場合、脳深部刺激療法(DBS)などが検討されることがあります。
すべての方が対象ではなく、慎重な評価が必要です。
治療後も、薬の調整やリハビリを組み合わせて継続することが重要です。
まとめ
パーキンソン病では、薬で動きやすい状態をつくり、リハビリでその力を生活に活かすことが大切です。
食事動作の工夫や嚥下への対応、歩行、姿勢、会話の維持は、生活の質(QOL)を守るための重要なポイントになります。
- むせが増えた
- 転びやすくなった
- 声が小さくなった
などの小さな変化は、治療やリハビリを見直す大切なサインです。
ひとのわメディカルでは、専門スタッフが一人ひとりの状態に寄り添い、最適なリハビリプランをご提案します。