
「最近、手足に力が入らないけれど、もしかしてALSなのかな…」
「ALSの検査って、どんなことをするんだろう。つらい検査だったらどうしよう…」
このように感じている方もいるかもしれません。
原因のわからない症状は、大きな不安につながります。
ただし、不安な時こそ正確な情報を知り、過度に心配しすぎないことが大切です。
この記事では、ご自身やご家族の症状に心当たりがあり、ALSの検査について詳しく知りたい方に向けて、
- ALSを疑うべきサイン
- 検査の具体的な流れと内容
- 診断が確定するまでのプロセス
上記について、わかりやすく解説します。
検査の内容や流れを事前に把握しておけば、心の準備ができ、落ち着いて受診しやすくなるでしょう。ぜひ参考にしてください。
ALS検査の基本と重要ポイント
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断は、「この検査を受ければ確定」という単独の決め手がある病気ではありません。
医師が症状の経過や神経学的診察(上位・下位運動ニューロン障害の所見)を評価し、筋電図検査(針筋電図)や神経伝導検査、画像検査、血液検査などを組み合わせて総合的に判断します。
ここで重要なのは、ALSの検査は「完全な除外診断だけ」で進むというより、
- ALSらしい所見を確認(臨床所見+電気生理所見など)しつつ
- 症状が似ている病気(“まねをする病気”)を除外していく
という「鑑別診断」の考え方で進む点です。
ALSと似た症状を起こす病気には、たとえば頸椎症性脊髄症や、治療によって改善が期待できる多巣性運動ニューロパチー(MMN)などがあります。
こうした病気を見逃さないためにも、検査を段階的に行うことが大切です。
検査では、主に筋肉や神経の状態を調べます。
中心となるのは、針筋電図検査(EMG)や神経伝導検査(NCS)です。
これらに加えて、必要に応じてMRI(脳・脊髄)や血液・尿検査、髄液検査(腰椎穿刺)、遺伝学的検査などが行われます。
さらに、まれに筋生検が実施されることもあります。
ALSは「完全な除外診断」だけではなく、所見の積み上げ+鑑別で進む
ALSには、血液検査や画像検査のように「陽性であれば確定できる」といった特異的(決定的)な検査はありません。
そのため診断は、医師が症状の経過(進行性かどうか)や神経学的診察での所見(上位・下位運動ニューロン障害の有無)、さらに針筋電図などの検査結果を総合的に評価して行います。
同時に、類似した他の疾患を除外していくことも重要です。
ここで注意したいのが「しびれ」の症状です。
ALSは主に運動ニューロンが障害される疾患であり、触覚や痛覚といった感覚神経は比較的保たれることが多いとされています。
そのため、しびれや感覚低下が主な症状として現れている場合には、末梢神経障害や頸椎由来の疾患など、別の原因の可能性も考慮する必要があります。
ただし、症状の現れ方には個人差があり、他の疾患が併存することもあるため、自己判断は避け、医師による評価を受けることが大切です。
運動ニューロン障害の診断方法
運動ニューロン障害の診断では、脳から脊髄へ命令を伝える上位運動ニューロン(UMN)と、脊髄から筋肉へ命令を出す下位運動ニューロン(LMN)のどちらに障害があるか(または両方か)を評価します。
上位運動ニューロン障害をみるために、診察では
- 深部腱反射の亢進
- 病的反射(バビンスキー反射など)
- 痙縮(つっぱり)
などを確認します。
下位運動ニューロン障害では、
- 筋力低下
- 筋萎縮
- 線維束性収縮(筋肉のぴくつき)
などを診察で評価し、さらに針筋電図検査(EMG)で客観的に確かめます。
下位運動ニューロン障害の検査手法
下位運動ニューロン障害の評価では、電気生理学的検査が非常に重要です。
針筋電図検査(EMG)
針筋電図検査は、筋肉に細い針電極を刺して、安静時と力を入れた時の電気活動を記録します。
ALSなどで運動ニューロン障害が疑われる場合、EMGでは脱神経を示す所見として
- 線維自発電位(fibrillation potentials)
- 陽性鋭波(positive sharp waves)
などがみられることがあります。
さらに、線維束電位(fasciculation potentials)や、慢性変化として運動単位電位(MUP)の変化が評価されます。
※これらの所見はALS“だけ”に特異的というより、運動ニューロン障害を示す所見として臨床所見と合わせて解釈されます。
神経伝導検査(NCS)
神経伝導検査は、末梢神経に電気刺激を与え、伝わり方(速度や反応の大きさ)を測ります。
EMGとセットで行われることが多く、ALSの評価でも一般的です。
ALSでは感覚神経の伝導は保たれることが多い一方、末梢神経障害など別の病気では異常が出ることがあるため、鑑別に役立ちます。
血液検査(CKなど)・筋生検について
血液検査では、甲状腺機能異常、炎症性疾患、筋疾患など、他の原因を探る目的で行われます。
CK(クレアチンキナーゼ)は「筋肉が壊れているか」の参考になることがありますが、ALSの確定診断をする検査ではなく、筋炎・筋ジストロフィーなどの鑑別の文脈で解釈されるのが一般的です。
筋生検は診断に必須ではなく、必要となるのはまれで、典型的でない場合などに他疾患を除外する目的で検討されます。
ALSの診断までのプロセス
ALSの診断は、単一の検査で確定できるものではなく、診察所見と複数の検査結果を組み合わせ、類似した疾患を除外しながら総合的に判断されます。
そのため、診断までに時間を要することもあり、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
これは、ALSに特有の「単独で確定できる検査マーカー」が存在しないことに加え、初期症状(筋力低下・話しにくさ・飲み込みにくさなど)が他の疾患でも見られるためです。
具体的には、針筋電図検査(EMG)や神経伝導検査(NCS)を中心に、MRI(脳・脊髄)、血液・尿検査などが行われます。
さらに必要に応じて、髄液検査(腰椎穿刺)や遺伝学的検査、まれに筋生検が実施されることもあります。
これらの結果をもとに、頸椎症性脊髄症や多巣性運動ニューロパチー(MMN)などの疾患との鑑別を進め、最終的な診断に至ります。
発症から初めての診察まで
ALSの最初の兆候は、日常生活の些細な変化として現れることがあります。
「ペットボトルの蓋が開けにくい」「話し方が不明瞭になった」「食事中によくむせる」などです。
こうした症状は加齢や疲れによるものと自己判断されがちで、受診が遅れることもあります。
また、初めから神経内科を受診するとは限らず、症状に応じて整形外科や内科、耳鼻咽喉科などを受診し、そこでの評価を経て神経内科に紹介される流れも珍しくありません。
初診時には、
- いつから
- どんな症状が
- どのように変化してきたか
をメモにして伝えると、診断の手がかりになります。
診断が確定するまでの道のり
ALSの診断が確定するまでの期間は個人差があります。
研究では、症状出現から確定診断までが8〜15か月程度と報告され、中央値が約12か月前後とする報告もあります。
これは、ALSに似た病気を除外しながら、診察・検査・経過の評価を重ねる必要があるためです。
なお、専門施設・専門医での評価が早期診断につながる可能性を示す報告もあり、「早めの相談」が大切です。
診断に至るまでの具体的なステップ
ALSの診断は、主に以下の流れで進みます。
- 問診・神経学的診察いつからどんな症状が出たか、筋力・筋萎縮・反射・病的反射などを評価します。
- 電気生理学的検査(EMG/NCS)下位運動ニューロン障害を示す所見の確認や、末梢神経障害などの鑑別に役立ちます。
- MRI(脳・脊髄)頸椎症性脊髄症、脳・脊髄の腫瘍など、他の原因の除外に用いられます。
- 血液・尿検査(必要に応じて髄液検査、筋生検、遺伝学的検査など)炎症性疾患や筋疾患、感染症など他の疾患の可能性を検討します。
- 診断基準に照らした総合判断伝統的には改訂El Escorial基準やAwaji基準が用いられ、近年はGold Coast基準も提案されるなど、診断枠組みはアップデートされています。
ALSの診断が難しい理由と注意点
ALSの診断が難しい主な理由は、下記の通りです。
- 単独で確定できる検査がない
- 初期症状が他の病気と重なりやすい
- 病的所見が時間経過とともに明確になる場合がある
また、ALSでは感覚障害は出現しないことが多いため、しびれ・感覚低下が強い場合は別の原因も含めた評価が重要になります。
診断の難しさとその背景
ALSを特定できる「決定的な血液検査」や「画像マーカー」は現時点では確立されておらず、診断は基本的に病歴と診察が中心です。
EMGは下位運動ニューロン障害の証拠を補う重要な検査ですが、あくまで診察を補助する位置づけです。
ALSの初期症状と診断の流れ
ALSの初期症状は多様で、現れ方には個人差があります。
片手の使いにくさ(箸が持ちにくい、ボタンがかけにくい等)、足のつまずきやすさ、話しにくさ(構音障害)、飲み込みにくさ(嚥下障害)などがきっかけになることがあります。
これらの症状に気づいたら、できるだけ早めに神経内科など専門医へ相談しましょう。
診断は、問診・神経学的診察から始まり、EMG/NCS、MRI、血液検査などを組み合わせ、鑑別を進めながら総合的に判断されます。
関連記事:ALSの症状とは?検査方法や治療法を解説
まとめ:ALS検査への不安を解消し、次の一歩へ進みましょう
今回は、ALSの検査や診断に不安を感じている方に向け、
- ALS検査の具体的な流れ
- 確定診断に至るまでのプロセス
- 各検査の目的と内容
を解説しました。
ALSの診断は、単独の検査で決まるのではなく、診察所見と複数の検査結果を総合して慎重に判断されます。
検査結果を待つ間は心細く感じることもありますが、正しい知識を持つことで不安を必要以上に膨らませにくくなります。
そして、もし気になる症状がある場合は、自己判断で結論を出さず、神経内科など専門医に相談することが大切です。
専門医の評価は診断までの時間短縮につながる可能性も示されています。
検査を通じて体の状態を正確に把握することは、今後の方針を考えるための重要な第一歩です。
あなたが落ち着いて次の一歩を選べるよう、この記事が少しでも役に立てば幸いです。