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ALSを発症する原因とは?初期症状や治療法も解説

ALSと診断されると、ご本人はもちろん周囲の方も不安や戸惑いを感じるものです。
また、ALSの疑いがあるとされた方も、同じように気持ちが落ち着かないかもしれません。
こうした不安を和らげるためには、発症の原因を知り、適切な治療やケアの選択につなげることが大切です。

そこで本記事では、ALSの概要と原因をわかりやすく解説します。
主な初期症状や治療法にも言及していますので、ぜひ参考にしてください。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

ALSとは、身体を動かすために脳から筋肉に指示を送る運動ニューロンに障害が生じる、進行性の難病のことです。

脳からの「身体を動かせ」という命令が筋肉に伝わらなくなり、手足やのど、舌、また呼吸に関わる筋肉が徐々にやせ細って力を失っていきます。
その結果、手足の動きや発声などに支障が出るようになり、さらに症状が進むと呼吸障害を引き起こします。
人工呼吸器を使用しないと、数年のうちに呼吸不全に陥り、最悪の場合亡くなることもあるのです。

一方で、身体の感覚や視力、聴力、内臓機能などは正常に保たれるのが特徴です。

ALSを発症する原因

残念ながら、ALSを発症する原因は完全には解明されていません。
ただし、これまでの研究によって、いくつかの要因が神経細胞に影響を及ぼしている可能性が示唆されています。

本項で取り上げるのは、そのうち有力とされている5つの仮説です。
どれもまだ、ALS発症の決定的原因として認定されたわけではなく、複数の要因が複雑に関与していると考えられており、研究が進められています。

【ALSの発症要因とされる有力仮説5つ】

  • 遺伝子異常
  • 異常なタンパク質の蓄積
  • 酸化ストレス
  • ミトコンドリア機能不全
  • グルタミン酸毒性

遺伝子の変異

ALSの発症には、特定の遺伝子に生じる変異が関与している可能性があります。
ALSを患う方の5~10%程度は、遺伝性の“家族性ALS”とされています。

両親や祖父母のいずれか、またはその兄弟などにALSを発症している方がいる場合、遺伝によって子どもや親族も発症するケースです。

発症には30種類以上の遺伝子が関与しており、なかでもスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)という遺伝子の変異が、家族性ALSを発症する原因だと考えられています。

家族性ALS以外にも、“疾患感受性遺伝子(リスク遺伝子)”とよばれる遺伝子が、食生活などの環境要因との相互作用によって、ALSの発症リスクを高めるとする学説もあります。

異常なタンパク質の蓄積

ALSを発症する原因の一つとして、“TDP-43”とよばれるタンパク質の異常な蓄積も挙げられています。
TDP-43は本来、細胞の中の核に存在しています。

ところが何らかの理由でこのたんぱく質が核の外に漏れ出し、かたまり(凝集体)を作ってしまうことがあります。
このかたまりが細胞の中にたまってしまうと、神経細胞の働きがうまくいかなくなり、とくに「運動ニューロン」と呼ばれる筋肉を動かす神経が影響を受け、手足や体の動きに支障が出るようになります。

では、なぜTDP-43の異常が起きるのでしょうか。
現在は、遺伝子の変化(変異)や、活性酸素などによる「ストレス」が関係していると考えられています。

私たちの細胞は、ストレスを受けてもすぐに壊れるわけではありません。
まずは「ストレス顆粒(かりゅう)」という一時的な“シェルター”をつくって、自分を守ろうとします。
この仕組みによって、細胞は大切なたんぱく質などを守りながら回復をはかります。

しかし、このストレスがあまりにも強かったり長く続いたりすると、この防御機能がうまく働かなくなり、TDP-43のようなたんぱく質の異常が進行してしまうのではないか——そんな仮説が研究によって提案されています。

酸化ストレス

酸化ストレスによる運動ニューロンへのダメージの蓄積が、ALS発症の一因ではないかとの見方もあります。

酸化ストレスとは、体内で活性酸素が過剰に発生し、それを無害化する抗酸化作用とのバランスが崩れた状態のことです。
活性酸素は体内の細菌やウイルスを除去するために必要な物質ですが、増え過ぎると正常な運動ニューロンやDNAなどを酸化させ、傷つけてしまうことがあります。
その結果、運動ニューロンに障害が現れ、筋力低下や筋萎縮などの初期症状を引き起こすとされています。

では、どうしてTDP-43のような異常なたんぱく質がたまってしまうのでしょうか?
その原因のひとつが「酸化ストレス」です。

酸化ストレスとは、体内で「活性酸素」や「フリーラジカル」といった有害な物質が過剰に発生し、細胞を傷つけてしまう状態のことを指します。

これらが神経細胞にダメージを与えることで、TDP-43の蓄積が進み、結果としてALSの発症に関与するのではないかと考えられています。

ストレスは遺伝だけでなく、喫煙や化学物質、空気の汚れなど、生活環境が原因で起こることもあります。

ミトコンドリア機能不全

細胞のエネルギー源をつくり出すミトコンドリアの機能不全も、ALSを発症する原因の一つとされています。
神経細胞のエネルギーが不足するため、運動ニューロンのはたらきが弱まり、脳からの命令を筋肉に届けられなくなります。

さらに、ミトコンドリアの機能不全による影響はこれだけではありません。
ミトコンドリアは、エネルギーをつくる過程で少量の活性酸素を生み出します。
しかし、エネルギーをつくる力が弱くなると、活性酸素の割合が増えて細胞内に酸化ストレスを引き起こします。
このように、ALSはミトコンドリア機能不全と、それが引き起こす酸化ストレスによって発症する可能性も指摘されているのです。

グルタミン酸毒性

神経伝達物質であるグルタミン酸が運動ニューロンを過剰に刺激することで、神経細胞を死滅させる現象をグルタミン酸毒性といいます。
このグルタミン酸毒性も、ALSの発症に関与するとされる原因の一つです。

神経細胞から放出されたグルタミン酸は、受容体に結合して情報を伝達したあと、アストロサイトという回収を担う細胞によって取り込まれます。
アストロサイトに異常が生じると、グルタミン酸が十分に回収されず、神経細胞をつなぐすき間に蓄積して運動ニューロンを刺激しつづけます。
その結果、運動ニューロンが慢性的に興奮状態になり、細胞内にカルシウムイオンが大量に流入することで、神経細胞が死滅してしまうのです。
これにより、手足や口まわりを動かす際に違和感が生じるようになると考えられています。

ALSの初期症状

ALSの初期症状の種類や現れ方には個人差があります。
ここでは、ALSの代表的な5つの初期症状を詳しく解説します。

【ALSの初期症状】

  • 筋力低下や筋萎縮
  • 筋肉の小刻みな収縮
  • 筋肉の小刻みな収縮(線維束性収縮)
  • 筋肉の痙攣や硬直
  • 肩こり・関節の痛み

筋力低下や筋萎縮

ALSを発症すると、筋肉を動かすための命令を伝える運動ニューロンが徐々に壊れていくことで、脳からの命令が筋肉まで十分に届かなくなります。
その結果、筋肉を動かしづらくなり、筋力の低下や筋萎縮などの症状が起こります。

たとえば、歩行中に頻繁につまずくようになったり、口を動かしづらくなったりする場合は、ほかの症状にもよりますが、ALSの初期症状を疑ったほうがよいかもしれません。
また、のどの筋肉に力が入らなくなると、発声が難しくなるだけでなく、水や食べ物をうまく飲み込めなくなることもあります。

このような筋力の低下や筋萎縮は、手足などから症状が現れ、やがて全身へと広がっていきます。

筋肉の小刻みな収縮(線維束性収縮)

筋力の低下や筋萎縮のほか、手や舌、ふくらはぎなどの筋肉が「ピクピク」と動くのもALSの初期症状の一つです。
これは、運動ニューロンがダメージを受けることで筋肉への信号が不安定になり、一部の筋線維が意図せず収縮するためです。

ただし、このような筋肉の収縮は、ストレスや疲労の蓄積が原因で一時的に現れることもあります。
ご自身でALSの初期症状かどうかを判断するのは難しいため、症状が長く続く場合は総合病院を予約し、脳神経内科の受診を相談しましょう。

筋肉の痙攣や硬直

ALSの初期には、筋痙攣や筋肉の硬直も見られます。
筋痙攣とは、筋肉全体が強く収縮して傷みを伴う状態のことです。
筋力の低下が進むことで筋痙攣を引き起こすのが一般的ですが、なかにはALSの初期症状として四肢や体幹などに発生するケースもあります。
これにより、歩行や日常の動作が困難になるほか、痙攣による不快感から睡眠障害を引き起こすおそれもあるため、症状を自覚したら早期に医療機関を訪れましょう。
まず、脳神経内科が近隣のクリニックになければ、一般内科を受診してください。
精密検査が必要と判断されれば、大病院を紹介されることもあります。

運動ニューロンの障害によって筋肉への正常な信号が送られなくなると、筋痙攣だけでなく筋肉の硬直も起こります。
これは、筋肉の緊張を抑える“抑制信号”が伝わらなくなるためです。

筋肉の疲労感・脱力感

ALSでは、運動ニューロンに障害が起こるため筋肉を十分に動かせなくなり、筋肉の疲れや脱力感といった症状も現れます。
「いつもやっていることなのに極端に疲れる」「よくものを落とす」「よくつまずく」といった症状が続く場合は、ALSの可能性も考慮しましょう。

症状が進行して筋肉が細くなっていくと、さらに疲労感・脱力感が強くなるため、なるべく早く脳神経内科の診察を受けることが大切です。
クリニックで症状が改善しない、または専門的な検査や治療が必要と判断された場合は、大きな病院を紹介してもらえるはずです。

肩こり・関節の痛み

ALSの初期症状として、肩こりや関節の痛みが現れることもあります。

これは、筋力の低下や筋肉の痙攣・萎縮によって歩行や日常動作が困難になり、まだ動かせる筋肉や関節に過度な負担がかかるためです。
これらの症状は、加齢やほかの病気が原因で起こる場合も多く、見過ごされることも少なくありません。
痛みが長引く場合は、ここまでに紹介した初期症状に当てはまるかどうかを確認し、自己判断せずにまず、かかりつけ医に相談しましょう。
なお、いずれの症状の場合も、1か月以上続く場合や、ほかの診療科で原因がはっきりしない場合は、迷わず脳神経内科を受診することが重要です。

関連記事:ALSの症状とは?検査方法や治療法を解説

ALSの治療法

現状、ALSを完治させる治療法は確立されておらず、ご本人の生活の質を維持することを目指した治療が中心的に行われています。
本項では、ALSの4つの治療法について解説します。

【ALSの治療方法】

  • 再生医療
  • 薬物治療
  • 対症治療
  • 手術治療

再生医療

ALSの治療には、再生医療が用いられる場合もあります。

ALSなどの難病をはじめ 、さまざまな病気や怪我で失われた機能や部位を回復させる次世代医療として注目されているのが再生医療です。  
病気や怪我で傷ついた身体の組織を修復するために、乳歯や脂肪、骨髄などから採取した“幹細胞”とよばれる細胞を使用します。

再生医療の具体例として、ひとのわメディカルでは、“歯髄幹細胞培養上清液”を使用した治療に取り組んでいます。
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養する過程で得られる新しいお薬です。
当院の使用している上清液を使用すると、症状の改善する方が多数いらっしゃいます。まずは、硬くなってしまった筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなったり、動かなかった足が動き出す方などがいます。

細胞を直接使わない新しいアプローチであり、ALSに悩む方の症状改善が期待できます。

参照:厚生労働省『再生医療とは』

関連記事:再生医療の効果とは?5つの治療方法の特徴と副作用・デメリット

薬物治療

薬物治療では、酸化ストレスやグルタミン酸毒性など、運動ニューロンを傷つける要因に作用して進行を抑えることを目指します。
その一環として、ALSの進行抑制効果が期待できる“メコバラミン”という薬剤が用いられることがあります。

なお、ALSの症状が進行している方には、薬物治療と対症治療を併用することが一般的です。

対症治療

対症治療は、ご本人の延命だけでなく、日々の生活の質を維持する目的で行われます。
理学療法やカウンセリングの組み合わせなど、一人ひとりの症状に応じた治療を受けられるのが特徴です。

たとえば、筋肉のこわばりや関節の痛みがある方は、身体の可動域を保つためのリハビリを目的とした理学療法や物理療法などの専門的なサポートを受けることができます。
また、病気に対する不安が大きくなり、心の不調が現れた方には、薬物治療やカウンセリングが行われます。

こういった対症治療は、ご本人の生活を支えるうえで欠かせないものです。
ALSの初期症状が現れたら、できる限り早期に治療を開始するとよいでしょう。

手術治療

ALSの症状が進行し、呼吸や飲み込みが難しくなった場合は手術が必要です。

筋力の低下によって自力での呼吸が困難な方には、呼吸を補助するために気管を切開して人工呼吸器を取りつける手術が行われます。
また、食事をうまく飲み込めない方には、お腹に小さな穴を開けてチューブを胃に通し、直接栄養剤を注入する“胃ろう”という方法がとられます。

これらの手術は、呼吸機能や栄養管理を支え、日常生活を維持するために非常に重要なものです。

ALSと診断された方に必要な食事の工夫

ALSが進行すると、舌やのどの筋力が弱まり、咀嚼や飲み込みが難しくなります。
そのため、どうしても食事量が減ってしまい、体重維持が困難になりがちです。

体重の急激な減少は体力や免疫力の低下につながるため、食べやすいかたちにして体調維持に必要な栄養を摂ることが大切です。
その際、食事の仕方のほか、食材の選び方や調理方法への工夫が求められます。

以下に、その具体的なポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

安全な食事姿勢と食べ方のポイント

ALSを患っている方は、できるだけ上体を起こして食事を摂るよう心がけましょう。
食べるときは、固形物と汁物を交互に少量ずつ口に入れて、ゆっくりと咀嚼することが大切です。
また、一度に食べ過ぎると胃が張り、呼吸が苦しくなる原因になるため、食事の回数を増やすのもおすすめです。
工夫によって、ALSを発症していても体調維持に必要な栄養を摂ることができます。

飲食物の選び方と調理の工夫

咀嚼や飲み込みが難しい方のために、飲食物の選び方や調理方法にも工夫が必要です。
具体的には、柔らかくて水気があり、口あたりがなめらかな食材がおすすめです。
豆腐やヨーグルト、すりおろした野菜・果物などであれば、ALSの症状があっても咀嚼や飲み込みの負担が少ないでしょう。

また、さらさらとした液体よりも、とろみがあるほうがのどにかかる負荷が減ります。
たとえば、すりつぶしたじゃがいもを汁物に加えてとろみをつけると、ALSの症状に悩む方でも安心して食事を楽しめます。

ALSを発症する原因は解明されておらず、現在も研究が進められている

ALSの発症原因には、遺伝子の変異や酸化ストレス、グルタミン酸毒性など、いくつかの説がありますが、完全な発症メカニズムの解明には至っていません。
一方で、新しい治療法やケア方法の研究も進んでおり、少しずつ選択肢が広がりつつある状況です。

ただ、ALSは進行性の病気であるため、早期発見と適切なケアが非常に重要です。
症状の進行に合わせた治療や日常生活の工夫によって、ご本人の生活の質(QOL)をいかに維持・向上させるかが、この病気の課題といえます。

ALSの症状にお悩みの方は、ひとのわメディカルにご相談ください。
幹細胞培養上清液を使用した再生医療など、患者様一人ひとりに寄り添った治療を提案いたします。

脳梗塞の再生医療についてはこちら

再生医療(幹細胞培養上清液)についてはこちら

院長 瀨田康弘の写真

瀨田 康弘

ひとのわメディカル 院長|再生医療認定医

神経疾患・難病への再生医療アプローチを専門とする。ALS特定臨床研究(jRCT031230731)の主研究者。