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再生医療:幹細胞上清液(エクソソーム)の効果と安全性に関する当院の論文発表—新たな治療選択肢

はじめに

当院では、この2年以上にわたり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者様に対して歯髄幹細胞上清液の投与を行ってきました。その中で得られたデータや臨床経験をまとめることで、ALSの治療に少しでも貢献したいという思いから、このたび英語論文を投稿いたしました。

本コラムでは、その英語論文の内容を日本語で解説し、特に上清液の安全性について詳しくご説明いたします。あくまでもわかりやすいように嚙み砕いて解説していますので、ご興味がある方が原文でご確認お願い致します。また、一部ではその効果についても触れ、皆様が抱かれる「効果があるのか?」「安全なのか?」という一般的な疑問にお答えしたいと思います。

論文の詳細

  • タイトル: SHED-CM: The Safety and Efficacy of Conditioned Media from Human Exfoliated Deciduous Teeth Stem Cells in Amyotrophic Lateral Sclerosis Treatment: A Retrospective Cohort Analysis
  • 掲載誌: Biomedicines 2024, 12(10), 2193
  • DOI: https://doi.org/10.3390/biomedicines12102193
  • 5年間のインパクトファクター: 4.1 (2023年)

この論文を通じて、再生医療における歯髄幹細胞上清液の可能性と、その安全性について理解を深めていただければ幸いです。患者様とそのご家族、そして医療従事者が一つの輪となって病気と向き合うための一助となればと思います。

SHED-CM:筋委縮側索硬化症(ALS)におけるヒト乳歯剥離幹細胞培養上清液の安全性と有効性:後ろ向き研究

研究の目的と方法

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、現在リルゾール、エダラボン、トフェルセンなどの治療薬があり、最近ではメチルコバラミンも薬として認証されています。これらの薬剤は進行抑制において重要な役割を果たしますが、症状の改善は乏しいのが現状です。また、幹細胞治療も期待されていますが、十分な有効性を示すデータはまだ少ないと言われています。

そこで当院では、歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)を使用し、ALS患者様に対する新たな治療法を模索してきました。その結果、一部の患者様で症状の改善が見られました。本研究の目的は、約2年間にわたるSHED-CMの治療データをまとめ、その安全性と臨床効果を評価することです。

エクソソーム(上清液)の製造過程と安全性

本研究は、2022年1月1日から2023年11月30日までの期間に当院を受診し、ALSと診断された患者様を対象としています。患者様の年齢、性別、病歴、現在の症状などの詳細な情報を収集しました。

患者様の多くは、従来の治療法では十分な効果が得られなかった方々であり、新たな治療オプションとしてSHED-CMを希望されました。治療期間中は、定期的な診察と検査を行い、客観的なデータの収集と主観的な症状の評価を行いました。

この研究を通じて、SHED-CMがALSの症状改善に寄与する可能性と、その安全性についての貴重なデータを得ることができました。

安全性の検証

バイタルサインの変化

来院ごとに歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)の点滴投与前後でバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、SpO2)の変化を分析した結果、血圧と脈拍に有意な変化が認められました(table 2.)。点滴は1時間かけて行われるため、この変化は安静によるものが主要な要因と考えています(上清液の投与による影響の可能性もあります)。

また、初回投与と4回目の投与前のバイタルサインの比較では、有意な変化は認められませんでした(table 3.)。

これにより、継続的な投与によるバイタルサインへの長期的な影響は少ないと考えられます。

血液検査の結果

初回投与と4回目の投与前の採血データを比較したところ、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)と平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)に有意差が見られました(table 4.)。しかし、これらの平均差はごくわずかであり、測定誤差の可能性も考えられます。有意な差があったとしても、臨床的に意味を持つ変化とは考えにくい状況です。

また、総蛋白(TP)にも変化が見られましたが、これはALS患者様における食事摂取の困難さや病態による低下が主な原因と考えられます。

有害事象の発生状況

全314回の点滴投与のうち、10例(約3%)で有害事象が報告されました(table 5.)。具体的な症状としては、発熱、頭痛、下痢、皮疹、かゆみ、D-ダイマー(D-dimer)の高値などが含まれています。これらの症状はいずれも軽微であり、遅発性を含めて重篤なアレルギー反応は観察されませんでした。

安全性の総括

以上の結果から、SHED-CMの投与はALS患者様に対して高い安全性を示していると考えられます。バイタルサインや血液検査における変化は臨床的に重大な問題を引き起こすものではなく、有害事象も一過性で軽微なものでした。今後も継続的な安全性の評価を行いながら、患者様に安心して治療を受けていただけるよう努めてまいります。

有効性の結果

ALSFRS-Rスコアの推移

初回のALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)スコアと、4回目、8回目、12回目の投与後のスコアの変化を分析しました(Figure 1.)。さらに、各投与時のスコアの変化率の平均を算出し、その推移を評価しました(Figure 2.)。

個別症例の分析

患者様ごとのデータを詳細に分析すると、ALSFRS-Rスコアが0点で維持されている症例だけでなく、スコアが改善している症例も確認されました。これは、歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)の投与が、一部の患者様において症状の進行を抑制するだけでなく、機能の向上にも寄与している可能性を示唆しています。

考察

ALSの進行は患者ごとに異なり、そのため一概に評価することは難しいです。

ただ、一部の患者様でスコアの改善が見られたことがとても注目すべきことであることです。SHED-CMがALSの症状改善に対して可能性を示しています。しかしながら、個々の症例で効果のばらつきが見られるため、さらなる大規模な研究と長期的なフォローアップが必要です。

なぜ効くのか?そのメカニズムは?

歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)がALSに効果をもたらすメカニズムについては、完全には解明されていませんが、いくつかの仮説を考えています。

一つの仮説は、免疫系の調節を通じて間接的に効果を発揮しているというものです。具体的には、マクロファージやミクログリア細胞を炎症性のM1型から抗炎症性のM2型にシフトさせることで、神経の炎症を抑制し、神経細胞の保護や再生を促進している可能性があります。

上清液は、幹細胞を直接移植するのではなく、生体外で培養した幹細胞から分泌された有用な成分を集めたものです。この中には、数百種類にも及ぶサイトカインやエクソソームが含まれており、それらが複合的に作用していると考えられます。

有効成分を特定することは困難ですが、研究により以下のような神経疾患に有効とされる成分が含まれていることが判明しています:

  • VEGF(血管内皮増殖因子):血管の新生を促進し、神経細胞への栄養供給を改善します。
  • HGF(肝細胞増殖因子):神経細胞の生存と再生をサポートします。
  • MCP-1(モノサイト化学走化因子-1):マクロファージのM1/M2シフトを促進し、抗炎症効果を発揮します。

これらの成分が相互に作用し、神経の保護、修復、再生、炎症の抑制など多角的な効果をもたらすことで、ALSの症状改善につながっていると考えられます。

そのほか、分子シャペロンHSP70やAGFがSHED-CMの保護効果に関与している可能性があります。

ひとのわメディカルがお伝えしたいこと

効果があるのか?

歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)の臨床データと症例から、その効果についてご説明いたします。

当院での治療により、一部のALS患者様で症状の改善が見られました。特に、当院のホームページの症例動画でもご紹介しているように、動かなかった足が動くようになった症例があります。これは、ALSの通常の経過では極めて稀なことであり、SHED-CMの投与によって神経の修復が促進されている可能性が考えられます。

医学的なエビデンスとしては、現在のところ効果が限定的であるとの見解もあります。しかし、私たちは臨床現場での経験から、SHED-CMに症状の進行を抑制し、機能の改善をもたらす可能性があると考えております。効果の現れ方には個人差があり、全ての患者様に同じ効果が見られるわけではありませんが、このような症例が存在することは大変注目すべきことです。

今後もさらなる研究とデータの蓄積を行い、iPSを用いた基礎実験など、様々な観点から、ALSにたいする治療方法の解明に努めてまいります。

安全なのか?

安全性についても、投与後の観察とデータ分析から高い安全性が確認されています。

全314回の点滴投与のうち、重篤な副作用(入院が必要となるような副作用)は一例も報告されておりません。有害事象として報告されたものは、かゆみ、下痢、軽度の発熱など軽微な症状にとどまっています。これらの症状は一過性であり、適切な対応により速やかに改善しています。

安全性を確保するために、投与前後のバイタルサインや血液検査を徹底し、患者様の状態を継続的にモニタリングしています。また、治療プロトコルに基づき、医療スタッフが細心の注意を払って治療を行っています。(当院の安全性についてはこちら )

以上のことから、SHED-CMの投与は安全性が高いと考えております。患者様が安心して治療を受けていただけるよう、今後も安全性の確保に努めてまいります。

再生医療の可能性と展望

今後の研究計画と期待される成果

現在、当院では歯髄幹細胞培養上清液(SHED-CM)の効果をさらに解明するために、特定臨床研究を進めています。上清液の有効性と安全性をより科学的に検証し、治療の質を高めることを目指しています。

参加者を募集しておりますので、ご興味がある方はぜひご連絡ください。詳細はこちらのページをご覧ください。

再生医療がもたらす未来像

再生医療は、これまで治療が難しかった疾患に対して新たな希望をもたらす分野です。幹細胞やその培養上清液を用いることで、組織や臓器の再生、機能の回復が可能となりつつあります。

当院では、「患者様に寄り添い、一緒に病気と向き合う」医療を提供することを理念としています。再生医療の発展により、多くの患者様が症状の進行を抑え、さらには改善する未来を目指しています。これからも研究と臨床を通じて、患者様とそのご家族に希望と安心を提供できるよう努めてまいります。

私たちは、患者様、医療従事者、研究者、ご家族の皆様、が一つの輪となって協力し、治療を行っています。この輪が広がることで、より多くの方々が恩恵を受けられる未来が訪れることを信じています。

ひとのわメディカルの強み

  • 難病に効果のある上清液の開発
  • 再生医療認定医による治療
  • 4,000回以上の上清液投与実績脳梗塞

何かご質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

あなたのお話を聞かせていただけるのを楽しみにしています!

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瀨田 康弘

ひとのわメディカル 院長|再生医療認定医

神経疾患・難病への再生医療アプローチを専門とする。ALS特定臨床研究(jRCT031230731)の主研究者。